前回の記事の冒頭でお話しした、ウクライナから避難のペット犬検疫で特例という農水省発表のニュース記事ツイートに衆議院議員の先生が
と引用リプライされているのが目に入り、気が付いたらコメントを送信してしまっていました。
もっと冷静に書けば良かった、もっと届けなきゃいけない事は他にあったはずだ…と今更ながら反省しているので、今日は140文字では書ききれなかった思いをここに書かせて頂こうと思います。
私は昭和49年(1974年)生まれですので、生まれた時にはもう狂犬病は「昔のお話し」になっていました。
なので、勉強した知識しかありません。
ただ、幼少期、犬の散歩中に「狂犬病ってなぁに」と聞いたこっちを見る事なく祖父が発した
「…一匹でも狂犬病なんかだしたらここいらの犬はみんな連れてかれて殺される。墓も作ってやれない。」
が忘れられないんです。
番犬として、どこのお家にもワンちゃんがいるような田舎の、ドッグランなんてまだ無かったあの頃の、田んぼや畑のあぜ道が”そこいらの皆”のお散歩コースみたいな、そんな田舎で昔に聞いたじいちゃんの一言。
大人になって勉強して、その言葉の重さを知りました。
狂犬病が一例でも出たら
前回お話しした通り、狂犬病を発症したらほぼ100%の確率で人は死にます。
狂犬病の疑いがある犬に咬まれたらこのようにワクチンを接種(曝露後接種といいます)して発症を抑えるしか助かる方法がないのですが、
現在の日本にはこの曝露後ワクチンが圧倒的にありません。
だって「清浄国」だから。
岐阜大の杉山誠副学長(人獣共通感染症学)は今回の決定について「緊急的な農水省の措置だが、科学的に問題ない。むしろ避難民の心に寄り添った粋な対応だ(略)狂犬病の感染が広がるリスクは限りなくゼロに近い」とおっしゃいました。
-
https://news.yahoo.co.jp/articles/f12410cbc1dde001500ffc4f4ab77b36841bd609?page=2
news.yahoo.co.jp
今まで「ゼロ」でやってきたルールを崩した結果、「ゼロじゃなくなる」って、それは大問題だと思ってしまうのは私だけなのでしょうか…
こちら
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は, 2019年12月初旬に, 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告されてから, わずか数カ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となった。わが国においては, 2020年1月15日に最初の感染者が確認された後, 5月12日までに, 46都道府県において合計15,854人の感染者, 668人の死亡者が確認されている
引用:NIID 国立感染症研究所 より
って、たった一例でも、起きたらそこから始まってしまうのが感染症だと、つい数年前に目の当たりにしたばかりですから…なぜ「ゼロじゃなくなる」を良しと出来るのか私にはまだ理解が出来ていません。
そして、前回の記事に「たかだか犬一匹の事で大げさだ、これだけ騒がれてる中で狂犬病は蔓延しない」というDMをもらいましたが、もう間違っているじゃないですか?
「3/26~4/9の間に4件5頭の犬が入国し、係留中」(4/19日現在)って、ちょっと調べたら出てきます。
こういう時はまず「ちゃんと知る」事から始めないと、誰か任せでいたら本当に取り返しのつかない事になりますよってお話しなのに、しっかりして下さい。
差別や偏見をもたないために 「誰のせい」とかそういう話ではないから
最初に言ったように、私は実際に見てきた世代ではありません。
ので、Twitterで見かけたリアルな声をちょっと載せさせて頂こうと思います。
子供だったわしがキャンキャン鳴く犬を次から次とトラックの中に放り込んでいくのを何度も見て平気だったと思ってんのか。中には飼い犬を逃しちまってそれが捕まり、でも殺さなきゃならなくて飼い主の人が道端で土下座してるのも見てんだよ。あんなことはもう嫌なんだよ。
— ladysmoker (@lady_smoker_) April 18, 2022
こちらのツイートに
などなど…
今回は、この矛先が避難されてきた方々やそのペット達に向けられますよ。
コロナの時だってあんなにあったじゃないですか。
今だって、ロシア食品店の看板を壊したり、駅構内からロシア語の表記を消せと騒いだり、何の非も無い方々にまで因縁をつけてその対象にする人はいるんです。
でも、そんな事は絶対にあってはいけないんです。
同じ動物飼いとして、動物飼い同士がいがみ合うなんて、そんな事あって良いわけがないんです。
だから、覚えておいて下さい。
特例措置(検疫期間の短縮)が決まったからと言って、狂犬病が必ず侵入してくると決まった訳ではありません。
ただ感染症は目に見えないものだから怖いです、致死率100%なんてとてもとても怖いです。
その過剰な恐怖心が差別や偏見を生み出すという事を。
正しい知識をもって、きちんと警戒、しっかり自己防衛する事が大切なのです。
過剰な恐怖心で偏見を持たれたフェレットの例
-
思った通り「フェレットにかまれて人が死んだ」にまで飛躍した話で今起きていること、私たち保護活動者にできること
最初からずーっと言ってきている事なので、今さらもう「知ってるよ」って呆れ顔の皆様の顔が目に浮かびますが、私は保護活動なんか全然っしたくない活動者です。 いたちのおうちがその活動主旨として掲げる一番の基 ...
続きを見る
あくまでも噂の域を出ない「フェレットに咬まれて人が死んだ」でこんな事が起きるんですよ。
「知らないから」で恐れたり、「対処してなかったから」で不安になってしまうのだから、知っておきましょう、備えておきましょう。
やれる事をやっておこう
清浄国以外での「動物との関わり方」を参考にしてザックリ今の日本の状態に当てはめてみました。
- 冷静に常に新しい情報を仕入れる(一次ソースの確認)
- ワンちゃん飼いさんはワクチン接種を速やかに(これは義務ですよ!)
- その他の動物飼いさんは「外に出さない」を徹底(猫ちゃんの外飼いはもちろん、外でのお散歩が必要ない哺乳類ちゃん達のお散歩は控える)
- 野良の生物(野良猫や野生動物)をむやみに触らない、近づかない
- 自分の子以外の子との接触も極力控える
- 哺乳動物に触れたら手や衣服の洗浄を徹底的する(これまでの手洗い以上のそれが必要です)
こんなところでしょうか…?
コロナの時を思い出して下さい。
「自分だけは大丈夫」は通用しないのが感染症です。
しかも、狂犬病はコロナとは違って「疑わしきで殺処分」だという事は絶対に忘れないで下さい。
「人が死ぬ病気」を持ってるかもしれないで多くの動物たちがその対象になってきた歴史を繰り返さないために。
いたちのおうち(保護活動)はこう変わる
「そうなったら」言えばいい事かもしれませんが、今日のお話的にお伝えしないのも不自然なので、今はっきりお伝えしておきます。
狂犬病が日本に蔓延するような事があった場合、私たちのような一般人は「保護活動」はもう出来ません。
防護服を着た人たちの専門のお仕事になります。
いたちのおうちは、全国の皆さまに協力して頂く事で活動が出来てきていました。
外にフェレットがいたら「保護してあげて下さい。そこから先は引き受けます。とりあえず捕獲だけでもお願いします。」と言ってきましたが、そうなったらもう、皆さまの安全を守るために「外にいる子には触れないで下さい」と言わなければいけなくなります。
狂犬病が蔓延するってそういう事なんです。
私は活動者として、どこから要請があっても動けるように、有事に備えて、曝露前ワクチンを接種しておこうと思いました。
が、先ほどお伝えした通り、「ワクチンの数が圧倒的に足りていない」のです。
有事に備えるというのであれば、獣医療従事者の皆さま方が先だと私は考えます。
だから皆の安全を守るためには、「何もしない・させないという選択肢しかない」んです。
まとめ
この記事を書いている時に農林水産省から
【ウクライナ避難民の犬の輸入に係る対応について】 今回の対応は、輸入検疫措置の緩和ではなく、犬等の輸出入検疫規則に基づき、対応するものです。 この対応により国内での狂犬病発生のリスクが増すことはありません。 動物検疫に御理解、御協力、よろしくお願い致します。
公式の発表が出ました。
動画を見て頂ければお分かりの通り、災害時に外国から来てくれる災害救助犬と同じ扱いとするのだそうです…
どうしてそうなるのか本当に理解が出来ませんが、おそらくこれはもう覆らないのかもしれないなと…
「考え直して欲しい」の声を止めるつもりはありませんが、平行して皆さんにお伝えしたい事をそろそろまとめます。
狂犬病が一例でもでたら、しばらく動物界隈はかなりピリピリする事が予想されます。
検疫が機能していないからだという理由が明白な以上、皆が周囲に疑心暗鬼状態になりますから。
その時に「自分はちゃんと備えていた」と言えるよう、守れるよう、今からしっかり自衛していて下さい。
こちらは先ほど回ってきたウクライナの方のツイートです。
狂犬病の検疫特例反対。愛犬団体もいるし、犬たちを救いたい方はたくさんいる。しかも実際に来ている犬達は数匹だけ。募金したら、隔離に必要な資金がすぐ集まるでしょうし、費用免除等、親切でありながら国民•住民の健康に害を及ぼせない対応も可能のはず。
何より特別扱いは反発と憎悪しか生まない— ナザレンコ・アンドリー🇺🇦🤝🇯🇵 (@nippon_ukuraina) April 21, 2022
どんな気持ちでこれを書かれたのか…
こんな事を言わせてしまって申し訳ない、って胸が詰まります。
憎悪の対象に誰かがなってしまう事がないよう、皆で皆を守り合っていきましょうね。
追記
今日の記事、「日本が清浄国になるまで」というタイトルで書きだしました。
当時の事を知っている方に話を聞きに行ったり、参考資料を探したりしているうちに、とてもじゃないけど私には書けないと分かりました。
どのお話に触れても、もう二度とこんな事態を起こしてはいけない、繰り返してはいけない、それしか言う事ができません。
それでも、重たい話になってしまっている事には代わりはないので、Twitterで「少しでも和らげてくれる可愛い子の写真」を募集しました。
今日、登場してくれている子達はそうして集まってくれた皆です。
どの子も皆こんなに可愛い。
絶対に守らなければいけません!!!
ニョロ達みんな!モデルさんしてくれて、ありがとう!!!!!
お終いに
感染症(エキノコックス)撲滅のために島内の全頭が殺処分になった昔のお話を載せておきます。
野ネズミ対策と毛皮生産目的で、千島列島から礼文島にベニギツネが移入されたが、その中にエキノコックスに感染しているキツネが混じっていた。
エキノコックスは礼文島の野ネズミや犬に寄生し、島内に広がっていった。
昭和12年頃に最初の感染者が見つかり、昭和38年までには、認定されているだけでも患者数131名、死亡者数は103名までにのぼる。
昭和23年から行政は、キツネはもちろん、野犬と各家庭で飼われていた飼い犬飼い猫、全頭を殺処分した。殺処分された犬の数は約250頭までおよんだ。
犬を連れていかないでと泣き叫ぶ人、自分の犬を縁の下等に必死で隠そうとする人…。
そんな光景が島内でたくさん見られたとのこと。
感染が完全に終息 する昭和45年までは、礼文島内では犬と猫の飼育は禁止されていた。
繰り返してはいけない。
感染症は正しく恐れて、蔓延を正しく回避しなければいけない。
しっかり自衛して、みんなで乗り越えましょうね!!!