お仕事中の盲導犬はパートナーの安全を守るために全神経を注いでユーザーさんの目になる任務に集中しています。
声をかけたり、触ったり、その集中力が途切れるような事は絶対にしてはいけません。
めちゃくちゃお利口さんだし可愛いし、ついうっかり「可愛い♡」みたく口から出かかっちゃうのは私もそうだから分かるのですが、「お仕事中の子」にそれは危険(ユーザーさんにも盲導犬にも)ですので絶対ダメです。
グググっと飲み込みましょう。
なのでもちろん今日のアイキャッチ画像は、お話しが終わった後、盲導犬ユーザーである西島さんに許可を得て撮らせて頂いた写真ですのでご安心下さいませね。
そう、そのお話しの時、私は「今日のこのお話しを一人でも多くの方に届くよう私なりに伝えます!」と約束をしました。
皆さんに「その時のお話」を聞いて欲しいです。
いつも通りちょっと長くなるかもだけど最後まで読んでもらえると嬉しいです。
「盲導犬が理解される社会」って具体的にどんな社会だと思いますか?
あの日は朝から蒸し暑くて、雨がブワっと降っては止んで、ブワっと降っては止んでの繰り返しで、全く気温が下がることのないまま、ただジメジメムシムシムレムレビショビショって不快指数マックスの本当に嫌な天候でした。
私が駅についた時にはちょうどまた雨が降り出しはじめで、慌てて屋根の下へ駆け込む人、急いで傘を広げる人、人、人、がバタバタ慌てだす中、ギリギリ屋根の下ではあるけど階段ギリギリの場所で動かない(動けない)一頭と一人が目に入りました。
この感覚、上手く伝えられるか分からないのですが、雨の降り出し始めって、急に空気感が変わるっていうか妙にザワザワザワってなるじゃないですか?
人の動きももちろんそうなのですが、なんて言うのかな、突然ガラリと変わったあのザワついた空気感に戸惑っているように見えたので、「何かお手伝いできることはありますか?」って声をかけました。
立っておられたその場所は改札口から出てくる人からちょっと見えづらい死角にもなりえる位置で、しかも階段ギリギリの隅っこだったため立ち止まっていると危ないと思い、「もう少しこちらへ来t…」ってうっかり口から出かけてハッとしました。
目が不自由な方に「こっち」だなんて。こういう咄嗟に出ちゃった無意識な言葉で自分の無神経さに改めて気が付いたりしますよね…
「ごめんなさい。もう少し、あと2歩くらい左側へ動かれた方が安全です」
「ご親切にどうもありがとうございます」
これが私と盲導犬ユーザー西島さんとの出会いです。
「盲導犬、西島さん」でピンときた方もおられるかもしれませんが、分からないよって方は【盲導犬 ルートくん】で検索してみて下さい。
ルート君というのは2024年12月26日のお誕生日に10才(人間でいうと70才超)で盲導犬を引退するその日まで約8年間、西島さんのパートナーを務め、二人で「盲導犬が理解される社会づくりの為」に全国を回ってその活動をされていたので、ググるとその時の様子がたくさん出てきます。
今日の写真のこちらの子は西島さんにとって3代目のパートナーで、「今日は雨ですし、フラットタイプのタクシーを待ってるんですが…」ってことでした。
盲導犬に出会ったとき何をしたら良いのかなって
西島さんは左目は全盲ですが、右目は少し、例えば黒字に白などの光というか色というか「ボヤァっとだけですが少しだけは分かります」とおっしゃっていました。
「もう3台続けて乗車拒否されてしまって…」
って口にされた、黒いボディに白の文字の入ったフラットタイプのそのタクシー会社は私がいつも自分の子達の通院でお世話になっているタクシー会社の名前でした。
私は過去にこのブログで「フェレット連れでタクシーに乗せてもらえるのか」みたいな記事を書いています。
その時にたくさん調べたのですが、随分と昔のことであの頃調べたタクシー会社も名前からもう変わっているので今回またきちんと調べ直して、『原則として乗車拒否は正当な理由がない限り認められない(道路運送法)』が変わっていない事を確認しました。
もちろん、危険物を所持しているとか、あまりにも汚いとか、泥酔してるとかって、運転手さんの身の安全やその後のお仕事に支障をきたしそうな場合は当たり前に拒否できるっていうのも変わっていませんでしたが、西島さんがそれらに当てはまるはずもなく、ましてや連れているのは「お仕事中」のハーネスを付けた盲導犬です。
盲導犬を拒否できるのか調べてみました。
盲導犬を乗車拒否?まさか?そんなことが?!
盲導犬は、身体障害者補助犬法により、タクシーを含む公共交通機関や飲食店などの施設に同伴できます。タクシー運転手は、盲導犬の同伴を正当な理由なく拒否することはできません。
同伴義務:身体障害者補助犬法により、盲導犬を同伴する身体障害者は、タクシーを含む公共交通機関や飲食店などの施設を利用する権利が認められています。
乗車拒否の禁止:タクシー運転手は、盲導犬の同伴を理由に、正当な理由なく乗車を拒否することはできません。
合理的配慮:障害者差別解消法では、事業者に対して、障害のある人からの求めに応じて、負担が重すぎない範囲で、バリアを取り除くための対応(合理的配慮)を提供するよう努めることを求めています。
研修の実施:タクシー業界では、盲導犬同伴に関する理解を深め、乗車拒否をなくすための運転手向けの研修を実施しています。
マナー:盲導犬は、ユーザーの足元で静かに伏せており、乗客としてマナーを守って行動します。
拒否事例:2022年には、盲導犬ユーザーから寄せられた受け入れ拒否の事例のうち、タクシーの乗車拒否が24件発生しました。
抜粋:AIによる概要「盲導犬とタクシーに関する詳細」
そうか…
乗車拒否が「ある」のは分かっていたけど、統計として上がってる数字だけで「1年に24件」、これは少しショックですね…
もちろん、運転手さんが動物アレルギーだったりする場合もあるから、この記事は「悲しい現実です!」なんてまとめるつもりでは全然なくて
「お手伝い」は難しいことじゃないって広まって欲しい
実はこの話を友人にした時、「あなたは『盲導犬』について知ってるから簡単にそれができるけど、私たちはよく分かってないから…。私だって何か手伝った方がいいのかなとは思うしお手伝いできる事があるならしたいんだよ。でも、いざその場になったら何をしたら良いのか分からないし、邪魔しちゃいけないのかなとかやってあげる感みたく伝わっちゃったら失礼になるかなとか色んなことを考えちゃって…。多分そういう人の方が多いと思うよ。」って言われました。
なるほど。
「手伝って❝あげる❞みたいに受け取られたら失礼になっちゃうんじゃないか…」って結局声をかけられないという声が多いという話はそういう勉強会でよく聞きます。
確かにあの時も遠巻きに心配そうに西島さんを見ている人はたくさんいました。
あの…
困ってそうだなって思ったら、(目が不自由な方だけ特別って事じゃなく)普通に健常者同士でもそうするように「何かお手伝いしましょうか?」って、声をかけて良いんですよ。
確かに全員が全員ってわけではないのかもしれませんが、「声をかけてもらえるのは有り難い」「そうしてもらえると助かる」って障がいをお持ちの方からの声を私はいくつも聞いてきていますから。
ただその時、盲導犬を連れている方へ声をかける際に大切なのは、盲導犬ちゃんにではなく、必ず「人の顔」の方を向いて「人に」話かけて下さい。
これだけ。
これだけは「気を付けて下さい」って盲導犬協会からもそのようにアナウンスが出ています。
盲導犬ユーザーさんへの具体的な声のかけ方
例えば、横断歩道
信号機の色は盲導犬ではなく「人(ユーザーさん)」が周囲の状況の音(車の音や周りの人の動き出す音や止まる音)を聞き分けて判断されています。
なので、そんな時は一言、「今点滅しだしましたよ」とか「青になりましたよ」とか、それだけで「ずいぶん助かります」って聞いていますから、どうぞ、それだけでも声に出して伝えてみてください。
また、時間があるなどで一緒にそのまま渡れる時には「手引き歩行」と言って、自分の腕(肘の少し上らへんや肩)につかまってもらうお手伝いの仕方がありますので、そういう時はいきなりユーザーさんの手をひいたり背中を押したりせず、この方法を思い出して下さい。
手引き歩行の方法
①どちら側の腕がいいか聞く
②ユーザーさんの半歩くらい前に立って
③「ここです」って肩(か肘)の場所に手を誘導する
④「では、行きましょう」みたく歩き始めを伝える
⑤渡りきったら前後左右の安全を確かめてから渡り切ったことを伝える(その時に右側の通りには何があるとか正面突き当りには何が見えるみたいにその場の状況をお伝えすると、次の一歩が出しやすくなるので良いかなって思います)
⑥「では、私はここで」など、自分はそこまでのお手伝いで立ち去ることを確実に伝えてください。「では(じゃあ)」だけだと、その後に話が続くのか立ち去られたのか立ち去られるのか状況が分からず、ちょっとの間(状況を把握するために)「動けなくなってしまう時がある」という声を聞くことがあります。
横断歩道ではない他の場所の時とかでも困ってそうな方がいたら私はいつも、「何かお手伝いできることありますか?」って聞きます。
「○○がしたい」と言われた時どうしたら良いのかが分からなければ、「それはどうやってお手伝いしたら良いですか?」って聞きます。
「上手くできてなかったらすぐ言ってくださいね」って伝えますし、それでトラブったことはないので多分それで良いんだと思います。
一番大切なこと(お手伝い)は「見守る」こと
私は本当は、そのままタクシーを一緒に待って、タクシーが乗り場にきたら私が行って(ちょっと強めに雨が降っていたから西島さんが動くより私の方が身軽に動けるから)運転手さんに掛け合ってきちんと乗車される所までを見届けたかったです。
でもその日はめちゃくちゃタイトなスケジュールで動いていたので、いつ来てくれるのか分からないタクシーを一緒にそこで待ち続ける事は出来ませんでした。
西島さんは「大丈夫ですよ。話しを聞いてくれてありがとうございます。」って言ってくれたけど、心残りで仕方なかったです。
ただ、これなんです、私が皆さんに伝えますって西島さんと約束したこと。
「全部できない(かもしれない)から最初から何もしない」より、困ってそうだなって思った時はちょっと声をかけるだけでお困りごとの解消のお手伝いになれる事が多いってこと。
本来、盲導犬ユーザーさんは盲導犬と一緒に単独で行動ができる方たちです。
なので、基本的には黙って見守ることが私たち健常者のすべき事であるのは絶対です。(この「黙って」というのは冒頭でもお伝えしたように、声をかけたり周りで騒いだりして盲導犬が集中力を欠いてしまうと、安全に歩けなくなってしまって非常に危険だからです。)
その単独で行動ができるはずの盲導犬ユーザーさんが何かに困っている時というのは大概の場合、予期せぬ出来事が起きているからです。
例えば、ユーザーさんは目的地までの地図が頭に入っているのでその通りに盲導犬に指示を出して歩いているのですが、頭に入れてあった地図と実際の道が変わってしまっていたり、今回のように、突然の雨で人混みの流れが読みづらかったり、目が見えている私たちからしたら「ちょっとした事」でも、見えないことで「あれ?」ってお困りだったりするので、そのちょっとした事をちょっとお伝えするだけでお手伝いになれたりします。
だから皆さん、知って下さい。
盲導犬が理解される社会へ
ハーネスを着けた「お仕事中」の盲導犬と出会ったら
- 盲導犬に声をかけない、盲導犬の気が散るような声や音を出さない
- 盲導犬に触らない
- 盲導犬に食べ物を見せたり水をあげようとしたりしない
- 盲導犬の「目」を見ない(実はこれが一番大切なことだったりします)
まずは、ただ知って欲しい。それが理解の一歩目だと思うから。
知っていますか?
最近の盲導犬はハーネスだけでなく「洋服」を着ている子も多いです。
それは、「毛が落ちそうだから」を理由に入店/乗車拒否をされてきた歴史からだそうです。
西島さんは「一度着せたお洋服を次の日にも着せることはない」と、ブラッシングも歯ブラシも耳掃除も、きちんとケアして毎日ちゃんと綺麗なお洋服を着せて…それでも「犬はちょっと」と断られてしまう事がまだまだあるとおっしゃっていました。
盲導犬ユーザーさん達はパートナーである盲導犬が他の方に迷惑に思われないように本当に本当に気を付けていらっしゃいます。
もちろん、犬が嫌いとか犬が怖いとか、確かにそういう方からしたら盲導犬でも犬は犬だし怖いし嫌いだと思います。
近くに来られたら困る犬アレルギーの方もいらっしゃるでしょう。
今日のお話はそのような方たちにも何かをという話ではなく、また先ほどもお伝えしたように、基本的には「盲導犬と盲導犬ユーザーさんは黙って見守る」ですから、何かをどうこうって強いお話しでもありません。
ただ、知って欲しくて書きました。
困ってそうだなと思ったら気軽に声をかけて良いってこと。
声をかける時に気を付けることはこれだけだし、声のかけ方はこうしたらスムーズですよってこと。
まずはそれだけ、それだけまずは広まって欲しいなって。
おしまいに
盲導犬の育成費用はその90%が寄付によるものだそうです。
日本盲導犬協会は公益財団法人ですので「賛助会員になる」「寄付する」などその方法はたくさんあるのですが、一番、私たちが気負いなく出来る「ネットからの募金」のページをこちらへ貼っておきますね。
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インターネットで募金する案内ページ
日本盲導犬協会
www.moudouken.net
最後にずっと我慢してたことを…
めっちゃくちゃ可愛いかった!!!です!!!!!