深夜に震える声で「明日、私と一緒に○○まで行ってくれませんか」と電話がありました。
フェレットを道で保護した。
警察署では預かれない(理由は覚えてないとのこと)と言われたけど、昔(子供の頃)実家で飼っていたからフェレットの事は多少は分かるから自分が預かれると言って連れて帰ってきた。
保護について色々と調べてたら「いたちのおうち」があったから、その通りにしようと思った。
病院に連れて行ってあげなきゃいけないと書いてあったから、連れて行ったら、「外にいた子ならやっておいてあげた方が良いです」と獣医さんがお薬をしてくれた。
飼い主さんだという人から電話があったから、そのまま話したら、かけ直すと言われて電話は切れた。
ちょっとしたら、その人の知り合いだという人からかかってきて、すごく怒られた。
すごく怒っていたし、「あなたが勝手に連れて行ったんだから責任もってここまで持って来てくださいね」と指定された場所があまり人気のない場所で、考えすぎかもしれないけど一人で行くのが怖い。
怖くて怖くてたまらないから返す時に一緒に来てもらえませんか?
という内容でした。
このサイトはスマホから見てくださる方が8割以上なのでこれまで特にそれについてをお話しする事はなかった(ような気がする)のですが、パソコンからの閲覧ではトップページに私の電話番号は出ていません。
その子を保護してじっくり腰を据えてパソコンで「保護について」を調べていた捕獲主さんには、私が「困った事があったらいつでも連絡してきてください」と公開している電話番号が見えていなかったのです。
怖くなっていよいよ困って友達に相談をしたら、「そのサイトに電話するボタンあるよって言われて…気が付かなくて…もっと早くに相談してれば良かったのにすみません」っておっしゃっていました。
いやいや、こちらこそ、ごめんなさいね、相談しようと勇気をだしてくれてありがとう。大丈夫ですよ、私がついてますからね。
フェレットを保護してくれた事には感謝してますけど
最初の電話の段階で「警察署でお巡りさんに立会ってもらって返せば良いんですよ」と何度も言ったのですが、彼女の中で、警察署では預かってもらえなかった事が引っかかっていたのか、訳も分からず赤の他人にいきなり怒りの感情をぶつけられた事によっぽどショックを受けていたのか、そのあたりの事は私には分かりませんが、とにかく何かにすごく怯えていて、「一緒に来て欲しい」だけが望みとの事でした。
私はこういう事をしているので「警察署は動物たちにひどい事をする」は都市伝説だと分かっていますが、知らない人は「警察署では預かれない」と言われただけできっと「今連れて行ったらもしかして…」と怖い想像をしてしまうのかもしれないなってそれは分からなくもないですし、それより何より、自分に対して怒っている相手とは誰だって会いたくないに決まっています。
っていうかさぁ…
「相手が怒ってる」と自分が悪い事をしてしまったんじゃないかって不安になっちゃう人すごくよく見るけど、そういう人って大体みんな良い子。
「相手が怒ってるのは自分が悪い事をしたからだ」って悪い事なんかしていないのに勝手にしなくて良い反省をし始めちゃう良い子。
じゃないですか?
そんな、フェレットを保護してくれただけの良い子が正体がよく分からない何かに怯えて「一緒に来て欲しい」って言っているのに断れるわけも無いから、とりあえず約3時間の距離を行ってきました。
まずは彼女と飼い主さんから指定されたという時間の1時間前に警察署で待ち合わせをして、その場で直接「~というわけですので、立ち会って下さい」と署員の方にお願いをしました。
本来であればそういう時には、会計課の方に立ち会って頂くのですが、その日はあいにくと休日だったため、会計課はお休みです。
だから、(そんな事は滅多にないけど)もしも万が一「会計課の人間がいないから立ち会えない(返還はできない)」と言われたら、それも含めて全部「お巡りさんから直接先方さんに言ってもらわなければいけないから」って、私はちゃんと分かってもらいやすいように言葉を選ばずはっきりと「自分のペットを逃がしておいて、保護してくれた人に責任をもって届けに来なさいだなんて普通じゃ考えられない事だし、しかもそれが家にじゃないって、何かあったらいけないじゃないですか?だから、お願いします」って言いました。
そうやって、お巡りさんの了承を得たうえで、「~というわけなので、○○警察署まで来てください」ってご本人に電話をかけたら、「えっ?そんな勝手に話を進められても困るんですけど、そもそもあなたは何ですか?」って…
皆さんお分かりかとは思いますが、私も保護主さんも勝手に話を進めてなんかいません。
ここまでの流れ
- 警察署に落とし物を届けた
- それが生き物だったから警察署の代わりに責任を持って保管すると届け出た方が言った
- 落し主さんが現れた
- から、警察署できちんと返還する
- のに私が付き添いで来た
話を勝手に進めてはいないけど、確かに私は「あんた何?」ではありますね。
ちゃんと最初に名乗ったはずではありますが。
個人の飼育方針に口を出すなと言われても…
警察署に来る来ない、警察署に置いといてもらえないんですか(無理です)、取りに行くのは数時間後になる(どうしてですか?)「そちらが指定された場所から歩いてきたって20分もかからないですよ、お待ちしてますからなるべく早めにいらしてくださいね」で、私が電話を切ってしまったのが悪かったのかもしれませんが、会うなり「あのさー、あなた達さー」からそれは始まりました。
「勝手に病院へ連れて行って投薬なんかして何かあったらどう責任とるつもりですか?」
挨拶もなく突然そんな事を言われて驚いたのでしょう、涙ぐんだ保護主さんの「すみm」を、私は慌てて制止して出来るだけ声のトーンを落として言いました。
「数時間、外に出ていた程度ではあんなにノミがつくはずは無いんですけど、脱走させたのいつですか?」
「いつだって良いでしょ?」
「良くないですよ、いつ脱走させてしまったのか、なぜ脱走させてしまう事になったのか、その状況や経路の確認をしっかりして頂いて、再発防止に努めて頂くお話しをしに私は来ています。」
「あー、あなたが…なんでしたっけ?保護活動されてるとかいう方です?そもそもあなたのお話しを聞かなきゃいけない法律か何かあるんです?」
って、なんか長くなりそうだなぁとは思いましたが、とりあえず私は”回避できた事”に安堵しました。
責任問題になるから活動者は謝ってはいけない
すっごく嫌な話なんですけど、保護活動者って謝らないんです。
っていうか、軽率に謝っちゃいけないんです。
私はどちらかと言うと、「謝って済むなら(こっちが悪いわけじゃなくても)謝ってしまおう」ってタイプだし、なんか怒ってる人とかいたらさっさと「すみません」ってその場をやり過ごした方がスムーズだしって、ずっとそうやって生きてきているからその癖がついちゃってて、別に深く考える事もなく条件反射みたいに「すみません」って言っちゃうのめちゃくちゃあるあるなんですけど、保護活動の現場でそれをやったら取り返しがつかない大変な事になっちゃうことがあるからダメなんです。
その昔、「あなたのその軽はずみな発言(=すみません)のせいで輩れたらどう責任とるつもり?」って叱られました。
すみません=非を認めた
として、思ってもいない方向からとんでも無い言い掛かりをつけられる事があるから、って、そのお話はまた別の機会にして、脱線、終わり。
「法律」とか「責任」とか、そちらこそ分かってるんですか?って話
つい最近も同じような事を書いた気がするのですが改めて…
適正飼養の啓発というのは、出来ていない人には「超絶嫌な話」です。
ただでさえ「逃がしてしまった」という負い目があるのにグジグジグジグジ言われたら、そりゃ逆ギレしたくもなちゃうのは分かるんですけど、逆ギレってそもそも、痛い腹を探られまいという防御が必死すぎて攻撃になっちゃってるから「逆ギレ」なんですけど、その方もそうでした。
「動物愛護法といって飼い主には終生飼養の義務があることはご存じですよね?それは例えば、飼育している動物が事故に遭わないように、家の外へ逃げていってしまう事がないようにきちんとした飼い方をするなどの責任がありますよって事なんですけど、それはお分かり頂けていますか?」
「わざと逃がしたわけじゃないんだし責任とかそういう話じゃなくないです?」
「責任とか法律とかそちらがおっしゃるからそれに沿ってお話しをさせて頂いてるだけなんですけど、そもそも、あなたが逃がしてしまったこの子を保護して病院にまで連れて行ってくれたこちらの捕獲主さんにまずは言うことが他にあるんじゃないですか?」
「あ、まあ、保護してもらった事には感謝してますけど、さっきから聞いてるとうちの飼い方が悪いみたいな事ばっかりで正直気分悪いんですけど?」
と、ここで、「あの…」って誰かが割って入ってくれているのですが、ボイスレコーダーからの文字起こしなので、それがお巡りさんなのか保護主さんなのかちょっともう分かりません。
※個人に繋がるような情報は一切ださないという約束の元で会話の録音は許可をもらって行っています。「じゃあ、こっちも録音するから」として飼い主さんもiPhoneで録音されていました。
そこからお巡りさんによる本人確認等があり、もう〆として
「もう逃がさないであげて下さいね、そのためにはケージを正しく使っt…
「もうほんとっ何なんですか?さっきから。保護してもらったことには感謝してるって言いましたよね?ですけど、うちの飼い方にいちいちいちいち口を出そうとするのは違うんじゃないですか?それともケージが無いと飼っちゃいけない法律でもあるんです?無いですよね?違います?いい加減しつこ過ぎますよ!」
しつこいも何も結局何一つとして「ちゃんとした話」を聞いてもらってはいなかったけど、お巡りさんの顔が(もうそれ以上は止めて下さい。ここで大きなトラブルを起こさないでください) って言っているように見えたから…
誤解しないで下さいね、立ち会って下さったお巡りさんはとても良くして下さいました。
当直勤務のお巡りさんとは
当直さんとはざっくり、夜間や休日(警察署は24時間開いていますが…あ、免許の書換え!あんな感じで基本的には平日の決まった時間帯が営業時間内みたいな!※厳密にいえば別機関ではあるんだけど)の電話・来訪者対応(警察安全相談など)、無線対応、からの現場への指令、または現場と本部との中継・調整、場合によっては事件処理、等々で、大変にお忙しい中でお時間を割いて頂き、私がお願いした事は「命の事なので」で本当に無理をきいて下さっただけなのです。
本来であれば電話してからのところを「命の事だから直接来ちゃいました」でお話を聞いて頂き、
本来であれば会計課の営業時間に来て下さいのところを「命の事だからなるべく早く飼い主さんに返してあげたいから」で立ち会って頂き、
更にところどころで、どちらの肩を持つでもなく且つ円滑に話が進むよう適切な助言をして下さったり、で、本当に何から何までよくして頂きありがとうございましたでしかありません。
保護活動者には何の力もないから…
今日のお話でお伝えしたい事はただ一つ
私たち保護活動者には何の権限もありません。
だから「あなたの話は聞きません」と言われたら、それ以上はもう何も言えないのです。
お金を出して購入した自分の所有物をその方がどんな環境においていようが周りにその権利がないのと同じで、いくら動物はものじゃない!命だ!とはいえ、明らかな虐待の証拠でもない限り、赤の他人の私たちには飼育環境に口を出す権利は無いんです。
「わざと逃がしたわけじゃない」、そんな事は分かっています。
分かっているけど、外に出たフェレットが生きて帰れるばかりじゃない事を私たちは知っているから、だから、「気を付けてあげて欲しい」と念を押して、その気を付け方のせめてアドバイスをさせて頂きたいだけなんです。が、今回のお話しのように「聞かない」と拒絶される事は程度の差はあれそれなりにあります。
だから皆さん、
皆さん一人一人が分かっていないまだ知らない飼い主さんに「気付かせてあげるお手本」になって下さい。
誰かに直接「それは良くない飼い方ですよ」と言われたら意固地になってしまう人も多いですが、そういう人でも周りを見て「自分は間違ってるんじゃないか」と気が付いたらそっと改めてくれます。
「脱走させるような飼い方は良くない」という風潮がきちんと根付けば、そういう飼い方をする人は自然と減ります。
犬のノーリード散歩や猫の外飼いも、法律より多くの飼い主さんたちによる正しい知識を身に着けて愛犬愛猫を守ろうという意識の高まりの方が先でした。
フェレットでも同じですから、法改正をただ待つばかりではなく、「愛鼬を守ろう」という意識を皆さんから正しく発信していけば、脱走は減ります。悲しい事故は減らせます。
どうかよろしくお願いいたします。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡