定期的にくるご相談(?)の1つに
『フェレットをブラブラ(横揺らし)させてる人がいます。危ないと思いませんか?』
というものがあります。
送られてくるそれらの動画はいつもきちんと見ていますが、それについて私が何かを発言した事はありません。
それは、それらの動画を見ても『なんとも思わない』からです。
危ないと思ったら私は直接、そのまま本人に伝えます。
明らかに危ない事をしているのを見かけたら、注意しなければ気が済まないのが昭和のおばちゃんですからね。
そのおばちゃんが何も言わないって事は、「えっ?別に何も危ないことなんかしてないじゃない。」って事です。
ただ、これまで見てきた数本の動画については危なくないという判断ではありますが、もしかしたら、私が知らないだけで、どこかではそれ以上の事が行われていたり、もしかしたら、それらを見て、何も言われていないから平気だと勘違いをして、それ以上の(危ないとされる)遊び方にまで発展させてしまう飼い主さんが出ないとも限らないので、私の考え方を書いておこうと思います。
あくまでも私が調べた範囲での事でしかありませんが、最後までお読み下さい。
そのうえで、どこ発信だかも分からないような、過剰に心配を煽る文言に振り回されるのではなく、一人一人がきちんと考えて頂けたらなって思います。
ヘルニアはフェレットとミニチュアダックスに多い疾病…だ・け・ど・も!!
皆さんご存じかと思いますので、その詳細は省きますけど、ダックスフントって「Dachshund」って書くんですよ。
だから、文節末尾の d を濁らせないドイツ語では「ダックスフント」
JKC(ジャパンケネルクラブ)は英語読みでの登録だから、血統証明書には「ダックスフンド」と表記されています。
ちなみに、第一次世界大戦の時は「ドイツ語読み」を嫌って「バジャー(badger=アナグマ)ドッグ」って呼ばれてた事もあります。
そんな話はどうでも良いんですけどね、そのダックスフントの起源は一応、「最も古いものでは古代エジプトの壁画にダックスフントと酷似する犬種が刻まれている」って言われてますけど、ダックスちゃん達は、他の多くのワンちゃん達と同じように、完全に「人工的に作られた」犬種です。
最初は狩り目的から始まって、現在の愛玩目的用のミニチュアと呼ばれる子達に至るまで、その全ての「ダックス」と呼ばれる子達の特徴であるあの愛らしい「胴長短足」は品種改良の賜物なのですよ。
今日現在、日本のペットショップでお迎えできるフェレット達も、もちろん、狩り用などから愛玩用に品種改良されてきた動物ではありますが、この子達の胴長短足は品種改良によるものではありません。
もともとそういう体型なんです。
「いたち」なのですから…
後から作られた方(ダックス)を基準に「疾病」を考えるからおかしくなる
現在のダックスフントは、スイスのジュラ山岳地方のジュラ・ハウンドが祖先犬と言われ、12世紀頃、ドイツやオーストリアの山岳地帯にいた中型ピンシェルとの交雑によって今日のスムーズヘアード種の基礎犬が作られたと伝えられている。当時は体重10 - 20キログラムと大きかったようで、シュナウザーを配して、更に他のテリアによってワイヤーヘアード種ができた。またロングヘアード種は15世紀頃、スパニエルとの交雑によって作出されたが、どこでなされたのかは定かではない。
本来、ダックスフントは名前の表す通り、体重15キログラム程もあるアナグマを猟るため、また、負傷した獲物の捜索及び追跡のために農夫などによって改良された犬種で、「Bracken(狩猟)」の時代から特に地下での狩猟に適するよう繁殖されてきた歴史がある。 当時、ダックスフントはドイツ国内においてはテッケルやテカル、ダッケルと呼んでいたと言われている。19世紀頃、ミニチュアとカニンヘン(兎という意味)がスタンダードが入ることのできない小さな穴に入って、アナグマのみならず、ネズミやアナウサギ、テン類を猟るために改良されて誕生したようである。
引用:Wikipedia(ダックスフント)
長々と引っ張ってきましたけど、お分かり頂けますか?
最後の一文をもう一度、声に出してお読み下さい。
「テン類」にはもちろん「イタチ」も入っています。
というより、テンというのは、哺乳綱ネコ目(食肉目)イヌ亜目 イタチ科テン属に分類される食肉類なので、「イタチの分類の中にテンが入ってる」というのが正解なのですが、そんな事より何よりも、ここでお分かり頂きたいのは
ダックスフントが「後」って事です。
ちょっと強引な表現をさせて頂くと
ダックスフントというのは、
・ウサギやイタチなどを狩るために
もしくは
・ウサギなどを狩るのに都合がいい胴長のイタチを真似て、
無理に「作られた胴長短足」だって事です。
ダックスとフェレットは「骨格」が違う
ちょっと興奮したからといって、フェレットのようにグリングリン転げまわってぐねんぐねんローリングして遊びまくるダックス犬種を見た事がありますか?
ダックス犬はその体の構造上、自然な動作の中に「腰をひねる」がありません。
同じように見える「胴長短足」でも、ダックスフントとフェレットとでは、そもそもの体の作りが違うんです。
骨格図を見たらその違いは一目瞭然です。
我々人間でもそうですが、「背骨が真っすぐ(湾曲してない)」なのは「ストレートバック」と言われ内臓疾患に至りやすかったり、「腰痛の原因」でもあります。
骨格図を見たら分かる通り、ダックス犬種はもともとそういう「腰をいためやすい」真っすぐな(湾曲してない)骨格をしているのです。
って、フクナガ動物病院の福永めぐみ先生はおっしゃっています。
「ダックスをお迎えするから床に少しの段差もないように全面バリアフリーにリフォームしました」とかもたまに聞きますし、なんなら…
お迎えしたベビワン時期から、腰への負担をまず第一に考えて抱っこの仕方にも気を付けてあげなければいけないのが、ダックス犬のそれにはあるわけです。
ベビフェレでは「まず第一に腰への負担」を考える必要はありません。
いや、もちろん考えてあげるに越したことはないですが、「第一に」考えてあげて欲しいことはもっと他にたくさんあるっていう意味です。
ワンちゃんの方がフェレットよりペットとしては一般的ですし、いわゆるそういう情報も多く広く浸透しているのは分かります。
グッズでも何でもワンちゃん用の方がはるかに多いですし、お薬もワンちゃん用を少量にして処方されていたりしますしね。
でもだからと言って、「かかりやすい疾病」まで、「ワンちゃんではこうだから」って、ワンちゃんを基準に考えるのはおかしいんですよ。
「フェレットの腰について」を考える時に、腰を患いやすい体型に作られた(表現に難あり)ダックスを基準にするのは、ちょっとズレてるんじゃないかしら…?って私は個人的に思っています。
フェレットのヘルニアは「老化現象」が一番のその理由
とはいえ、シニアニョロに「椎間板ヘルニア」は多いです。
我々人間でも、ヘルニアばかりではありませんが、腰が曲がったり、背が縮んだりと椎間板や脊椎などに何らかの老化現象は起こります。
それが、背骨の長いフェレットですから、「長年の蓄積」はその分だけかかると思っていてあげて下さい。
この子達のヘルニアは、「老化現象の1つ」だと思っていてあげて欲しいんです。
もちろん、高い所から落ちた衝撃などでそうなる事もありますが、フェレットのヘルニアは、そのほとんどが「年齢的なこと」が原因とされているのです。
この子達のそれ…ヘルニアだけに限らず、脊椎やなにかで起こる老化現象で下半身が動かなくなる事は「長生きしてくれてる証拠」だって思ってあげて下さい。
その時に「自分の飼い方が悪かったんじゃないか」みたいにして、飼い主さんが自身を責めるような事では無いし、何も悲しい事では無いはずなのです。
年齢を重ねるってそういう事ですからね。
ちょっと一言
実際にそういう症状がでる年齢の子にはMRIを撮るための麻酔などが「危ない」という判断になる事が多く、きちんとした原因究明ができないまま「加齢のせいではないか」とされる事の方が多いと聞いています。
なので、いざ、そうなった時には、下半身が動かなくなったシニアニョロと、どうやったら、それからも「安全に楽しく暮らせるか」それを考えてあげて欲しいなって思うんです。
「長年の蓄積」だから、若いうちから「かかる負担」は少ない方が良いんじゃないかな…
毎日、ツルツルの床で足を滑らせながら歩いている子とそうじゃない子とのちゃんとした比較データがないので、これは何とも言えませんが、滑る歩きにくい床を歩くよりはそうじゃない方が腰や関節にかかる負担は少ないんじゃないかと思います。
日々の暮らしで少しずつ蓄積される関節や腰への負担がシニア期に入ってからの関節炎やヘルニアといった症状の原因になる事が多いとされているわけですから、若いうちから気を付けてあげられる環境であれば気を付けてあげて欲しいなって思うんです。
これは、放牧時間だけとか放牧スペースだけでもマットを敷くなどしてあげればだいぶ違いますので、ツルツル床のお家では、ぜひ、そうしてあげて下さいね。
※人間でもヘルニアを患うお子さんがいるように、幼いニョロでもヘルニアになる事はありますので、十分に気を付けてあげて下さいね。
長くなりましたが、ここでやっとこさ、冒頭の「フェレット横揺らし」についてのお話しになりますが、
フェレットをブランブラン横揺らしについて
これ、フェレットに慣れている人が実はよくやる行為なんです。
写真を撮る時とかにジタバタを一瞬、抑えるのにとても有効なので、「フェレット専門店の店員さんがやってた」なんてお話しを聞くこともあります。
だから、それを見て、お家で真似をされている方が多いのではないかなって思います。
それを受けてなのか、そういう動画が拡散される度に「胴長のフェレットの横揺らしは神経がやられて半身不随になる」などという怖い話も一緒に耳に入ってきたりもしますが、私が調べた限りでは、「横揺らしが原因で半身不随になったフェレット」という症例は見当たりませんでした。
下半身が動かなくなったとされる子の症例で、その原因はザックリと
- 加齢によるもの
- 内臓疾患や脊椎にできた腫瘍など
- 高所からの落下・踏みつけ事故
- 何らかの原因による神経麻痺(=原因不明)
となっていました。
※内臓疾患の治療中にその症状が出始めたというものも含まれています。
ご注意頂きたいのは、「下半身が不随になるまで神経を傷めるほどの横揺らし」は別に胴が長い短いは関係無く、単なる動物虐待にあたる行為です。
フェレットじゃなくても止めて下さい。
まとめ
- フェレットのブランブラン横揺らしは「慣れてる人が分かっててやる」なら問題はない
- フェレットがヘルニアになるのは「老化現象」が一番多い
- だからと言って油断するのではなく、胴が長い動物として、気を付けてあげて欲しい事はある
って、いたちのおうちは思っています。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡