「大至急、血を分けて下さい!今日明日が山です!」というメッセージが回ってきました。
供血可能なフェレットの条件は
- 健康状態が良いこと(その場で血液検査をします)
- 1才~5才以下(2~3才が最も適しているとされる)
- 体重1kg以上(1.2kg以上が好ましい)
などとされているのですが、これまで、いたちのおうちにはそれらにあてはまる子がいた事が長い間ありませんでした。
が、今は、体重1.8kg、先月の健康診断で「何も問題無し」とお墨付きをもらったばかりの今月で2歳になる条件ドンピシャのさすけがいます。
「さすけ!行こう!!」
とさすけに声を掛けたものの、詳細をよく見たら北海道での募集でした。
ここにいるのに、何もしてあげられる事が無いなんて…歯がゆい気持ちでただひたすらに「頑張れ、頑張れ」と祈りながら、続報を待っていたら、北海道のニョロリストの輪で事無きを得た、危機は脱した、と見ました。
良かった。
「皆の協力」で助かった子がいる。
本当に良かった。
これまでずっと自分が協力者(供血する)側になれる事が無かったので、どこか他人事のように単なる一般的な知識としてしか考えていなかった「供血」について、今回、改めて思う事や色々を整理して書いてみたいと思います。
古い記憶を引っ張り出してきてみたり、最近のリアルなお話しを聞かせてもらったり…まぁ、また長くなりますので、皆様には、どうか「いつどちらの立場になるか分からない」事を踏まえて、最後までお付き合い頂きたいと思います。
供血・輸血にまつわる嘘、本当、噂話や都市伝説
皆さんは「引き取り屋」って聞いた事がありますか?
動愛法がこれだけ厳しく改正され続けてきている今でもそんな商売が存在しているのかは分かりませんが、少し前までは確実に「不要になった生き物をお金をもらって引き取る」というグレーゾーン…というより完全に違法じゃないかと思われる事がビジネスとして成立していました。
「生き物が不要になる」だなんておぞましい場所がどこだか私は知りません。
そのお金がどういう名目でのそれなのかは分かりませんが、とにかく、お金をもらってまで引き取った生き物達をその後どうしていたのかも分かりません。
ただ、ある時、「そういう中にフェレットがいる事がある」という話を小耳に挟みました。
その時から私は「交通費を出すからここへ連れてきてくれ」と大々的に「お金を払います!(※金銭と生体の交換では無く、交通費その他の実費を支払うだけなので、これは違法ではありません)だからどこへも連れて行かないで!そのままにしないで!すぐに連れてきて!」と謳ってきました。
それは、その人達に向けてのアピールでした。
そういう人達だからきっと、お金をもらって引き取った命で、少しでもまたお金がもらえるなら、絶対こちらになびくであろうという苦肉の策です。
その結果は、まんまと過ぎる腹立たしく悲しい思い通りでしたが、過去の記事でもチラホラっと書いてきました。
詳細は書かず、だいぶ濁して…
今から少し、そのうちの「供血要員だったんじゃないかと思われる子」のお話しをさせて頂きます。
供血用のフェレットとは
最初の健康診断でいきなり「この子に何かが起きた時、元気にしてあげる方法はないと思って下さい。」って言われた子がいました。
その子がどこから来たのかを私は知りません。
先生の「体がボロボロすぎる」と「この子は普通の飼われ方をしてきてない」という言葉がどう繋がっているのかさえ全く理解できていませんでした。
その当時の私の経験値から推測できた「普通じゃない」は、せいぜい「劣悪な環境で売れ残りとして扱われてきた子」くらいしか無かったんです。
それが第一次フェレットブームの頃のお話しです。
それから数年後、第二次フェレットブームと言われたあの当時に、その子と同じように「一部の血管が潰れてしまっている」という子が来た事がありました。
その間に色々な資格を取り続け、保護活動者としての経験を積み、多くの事を知りました。
獣医さんとの信頼関係も出来ていました。
最初の時に来た子より、その子の健康状態が良かった事も関係していたのだとは思いますが、その時に初めて「あの時の子もこの子も供血用に飼育されていた子ではないか」と獣医さんの見解を教えてもらいました。
ずっと昔、「病院内の供血要員フェレットの血を全て抜いてでも来院した患畜フェレットを生きて帰らせるのが病院の務めだ」として、「名前も付けてもらえず、外の世界を知る事もなく他の子の命のためだけに飼育されているフェレット達がいる」だなんて噂がありました。
もちろんそれは、供血用のフェレットが全員そうだという事では無いですし、あくまでも、「そういう病院があるらしい」って噂話しです。
きちんとした環境の中で愛情いっぱいに過ごし、供血に適さない年齢、体調になっても、そのまま動物病院で最後まで育ててもらえる子の方が多いに決まっています。
実際に聞いた供血ニョロにはちゃんと名前がありました。
副腎疾患でリュープリンの治療も毎月ちゃんとしてもらっていたそうです。
二回目に来たあの子はきっと『お勤め明け…かな?』って、そういううちの一人だったんじゃないかなって思います。
供血と輸血をゴッチャにしてあれこれ混ぜ込んだのが都市伝説(噂話)
まことしやかに囁かれ続けている「供血に協力した子は病気に罹患しやすくなる・早死にする」は上記のような事と下記に続く内容から発生した都市伝説(=完全に間違った情報)です。
もしも本当に供血用に、そのためだけに飼育されている子達がいるのだとしたら、その子達は短命であるかもしれません。
でも、うちへ来た「おそらくそうではないか」とされた2ニョロは決してそんな事はありませんでした。
どこかで同じように「そうではないか」とされて、早くに虹の橋を渡る事になった子がいるのかもしれません。
そういうあれこれがゴチャゴチャになって、そんな都市伝説みたいな噂が広まったんだと思います。
「~だから、供血には協力しない」という飼い主さんの話しを何度も聞いてきました。
人間だって宗教的な理由などで輸血、献血の一切を拒否する事例は珍しい事ではない(⇒『否定されたらそこでお終い…それが私の宗教観』)のですから、飼い主さんが持つ「うちの子は供血に協力させない」という考え方について何かを言うつもりはありません。
ただ、その「~だから」があるのなら、それは事実とは違うという事を正しく知っておいて欲しいんです。
いつでも誰でもがすぐに血を分けてもらえる、皆が協力し合える環境になれば、「供血のためだけにフェレットを飼育する」必要は無くなります。
きちんとしたそういう環境が整えば、もしもどこかにいるのかもしれない、名前も付けてもらえない「ただの供血用フェレット」は皆と同じ普通のフェレットになれます。
いたちのおうちは、そういう時に協力しあえるニョロリストネットワークみたいな物を広げていけたら良いなって思うのです。
だからどうか、供血について本当の事を正しく知って下さい。
「供血」について
輸血時に血液型の適合が必須とされる犬や猫と違い、フェレットにはその検出できる血液型がまだ見付かっていないため、クロスマッチテストを行わなくても、ほとんど問題はない
とされています。
クロスマッチテストとは輸血を受ける子と供血する子との血液を混ぜ合わせて反応を見る交差適合試験の事です。
これは誰でもが目にする事のできる場所に書かれている(2015年時点まで確認済)とある獣医さんの言葉です。
まだ見つかっていない(血液の型が無いとは言ってない)
ほとんど問題はない(まったく無いとは言ってない)
に引っかかる方もおられるかもしれませんが、それについてはひとまず置いておいて…
そもそも「輸血」とは
輸血というのは我々人間でもそうですが基本的には「一時しのぎの延命」処置です。
事故の場合でも病気のそれでも、輸血をしたから回復するという事ではなく、体が回復するのに必要な「アイテムの1つを補充している」とお考え頂いたら分かりやすいでしょうか?
延命処置の1つとしてそれも施して、あとは「体に頑張ってもらう」しかないのです。
しかも、そのアイテムでは副作用がでる事があります。
ニュースやドラマなどで「処置中にショック状態に陥った」という言葉を聞く事があるかと思いますが、その原因が輸血である場合があるのです。
他者の血液を体内に取り込むのですから、「体質」に合わない事も当然あります。
ABO式の「血液の型」がある我々人間は、違う型の血液を輸血(異型輸血)すると血管の中で血液が壊されて重篤な症状が出ます。
だから、同じ型の血液を輸血するのですが、この「型」が合わないのと「体質」に合わないのとはまた別のお話しです。
先ほどもいったように、この子達にその「型」はありません。
でも「体質」に合わない事は当然あり得る事ですし、そもそも、輸血を受けるという行為自体がノーリスクでは無いのです。
例えばそれは、


って、この友達が

とも教えてくれました。
間違わないで下さい…
供血・輸血において、より高いリスクを背負うのは「輸血を受ける側」です。
「輸血を受けたから早死にする」なんて事はありませんが、「病気に罹患しやすくなる」可能性は上記の通り、完全には否定しきれません。
それでも、そのリスクを背負ってでも頑張ろうねって病気やケガと闘おうとしているニョロがいるのです。
供血に協力した側が病気に罹患しやすくなるなんて事はまず無いですし、ましてや早死にするだなんて事は、まったく根拠の無いデタラメですから、だからどうか、そういうお話しを聞いた時には「協力してあげよう」と前向きに考えてあげて欲しいのです。
供血に協力したフェレット達の実際のお話し
そうは言っても、体から血を抜くわけですから、まったく何も日常生活と変わらないまま、誰でもが冒頭に挙げた条件が全て揃っていさえすれば、簡単に「はいどうぞ」と出来るわけではありません。
今日のアイキャッチ画像の3ニョロは皆で協力して昨年(2018年)闘病中の1ニョロに供血の協力をしたそうです。
その時のお話しを聞かせてもらいました。
実例1
「供血は、年齢や病歴体重は勿論、 血液検査で引っ掛からないのと、 赤血球容積比(ヘマトクリット)、網状血球数も大事ですね。両方共、数値は変動しますが…」

「前日夜からの絶食、朝から絶飲で、血液検査からの供血となるので、3にょろでも空腹に耐えられる子と耐えられない子とで、ストレスのかかりかたは違いました。 1にょろは空腹から吐き気を感じてしまったり…」

「首元からの採血となるので、 毛を剃って、30分程かけて抜いていきます。うちの子達は体重があったので、量は17前後でした。 数時間かけて相手の子に入れていくんですが、血が濃いと(赤血球容積比)相手の子が、バタついてしまう事もあったので、鎮静かけた事も…」

実際のお写真(首元を剃毛)
「供血から1か月後位に赤血球容積比が戻ると言われていますが、らいちゃんは戻りがいまいちでした。(基準値内ではあるものの、元が高かったので)
供血から1ヶ月は空けないといけなかったので、 3にょろ交代制で乗りきっていました。
他の方に頼ることも出来ましたが、あまり何にょろちゃんかの血液は入れない方がいいらしく。。。
マッチングしなくなってくる事があるみたいです。
勿論、マッチングテストは毎回していました。やはり稀にNGな事があるみたいですね。」

このお話しは、輸血を必要としていたニョロちゃんが「その都度、輸血を必要とする」闘病生活だったからなのか、それとも先生のお考えでそういう方針なのか、
はたまた協力ニョロちゃん達がノーマルニョロだった事や体が大きくて採血できる量が多かった事が関係しているのか、もちろん複合的な理由でとも考えられますが、今まで聞いてきた中で群を抜いて大掛かりな供血協力の実例でした。

実例 2・3
「アリューシャンの検査(普通の血液検査より採血する量が多い⇒『アリューシャンの抗体血清検査とは?』)に出す時と同じ感じだった。」
これは、体重1㎏に対して10mlという基準値を考えると、3mlを3回(結果9ml)抜く血液検査と「同じ感じ」なのは納得です。
採血時に麻酔をかける病院と麻酔を使用しない病院があるのは、そのためでしょう。
麻酔をかけてからの採血では20~30分くらいじっくり時間をかけて行われるそうですが、普段の血液検査と変わらない採血の仕方で行う病院では
「血液を迅速に抜いて、アレルギーがでないように抗アレルギー剤の投与、血圧の変化を避けるために生理食塩水を皮下輸液。以上!」
だったそうです。
ちなみに、実例1でもありましたが、その際には必ず、「血液検査」はします。
血液の相性を見るクロスマッチテストではなく、輸血に適した状態にあるか、その子の血液成分を見るのです。
だから、無麻酔での採血を経験した飼い主さんは
「血液検査の結果が出るまでが一番時間がかかったんじゃないかと思う」
って言うくらい、
「採血自体は簡単だった」
と話してくれました。
また、副腎腫瘍で副腎を片方摘出しているニョロでも「供血に協力した事がある」というお話しもありますから、冒頭の条件をクリアしている場合は「うちの子は○○だから無理」と決めつけてしまわないで、そういうお話しがあった場合には、まずは病院で確認をしてから決断されると良いんじゃないかと思います。
まとめ
だいぶ長くなりましたが、多少なりとも「供血」「輸血」について具体的に考えて頂ける参考になれましたでしょうか?
実はですね、その昔は…古くからのニョロリストさんなら記憶にある方もおられるかとは思いますが、
「自分家の子に輸血が必要になったら若い供血に適したフェレットを買って自分家で回す」のが、そうあって然るべきみたいに言われていた時代があるのです。
それについては、
「まず血を抜く事を前提に、今いる子のためにお迎えをするだなんて、新しい子が可哀想」派と
「じゃあ言うけど、輸血が必要になった途端に(供血ニョロがいる病院へ)転院だなんて、”よその子”はどうでも良いの?」派
とで結論なんか出せないバチバチ論争を、その都度、繰り返すってだけなんですけどね…
外野で繰り広げられる論争なんかどうでも良いんですけど、そういう状態になったら、他人の意見やアドバイスが耳に入らなくなるのが飼い主です。
当たり前です。
私はそれで良いって思っています。
だから、そういう状態では無い、物事を冷静に考えられる今のうちに「考えておいて欲しい」って気持ちで今日のお話しを書きました。
少ない誰か達だけが血をあげる係を担当するのではなく、困っているニョロの話しを聞いた時、すぐに誰でもが「協力してあげられるよ!」って言い合える環境が整ったら、すごく素敵だなって思うんです。
今回、「皆のお陰でもう大丈夫」って見せてくれたあの子を見て、北海道のニョロリストネットワークを見て、改めてそう思いました。
心強い繋がり…大切に育んでいけたら良いですよね。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡