引っ越しシーズンのこの時期になると毎年、同じ事を言っているような気がしますが、今年もやっぱり、保護案件が増えてきています。
今日も長くなりそうなので、始めにこれを言っておきます。
「引っ越し先には連れて行けないからそこら辺に置いてきました」は動物遺棄という犯罪です!
「誰か良い人に見つけてもらえますように…」って、そんな都合よく、良い誰かが現れて偶然に見つけてくれるだなんて奇跡が起きる前に「死んじゃいますよ」って私は何度も何度も言ってきてるはずなんですけどね…
「なんで一緒に暮らせるお家を探してあげなかったんですか」とか言う気も今はありません。
返ってくる答えは大体いつも同じだし…
だからね、もうね、それは良いから、そういう時は、
里親さんを探して下さい。
あなたが自分で出来なければ引き受けてくれる保護ボラさんに繋ぎますから、急な引っ越しで里親探しをする時間がないって言ってくれればなんぼだって手伝いますから、お願いだから、「(近所の公園に)置いてきたあの子がやっぱり心配で」って、その手を放して何日も何日も経ってから言ってこないで下さい。
って、これは昔の話しなんですけど、次に同じような事があったら、私は「動物を遺棄したって人から連絡がありました」とそのまま警察に通報します。
だから、その前の段階で相談して下さいね。
保護活動者への「飼えないから引き取って下さい」は最後の手段なはずなのですよ…
「フェレットの引取りをお願いしたいんですけど」って、こういうご相談は珍しい事では無いのですが、その電話は最初からものすごく違和感がありました。
いつもなら、一言でも何かを間違えたら壊れてしまうような空気感、なんともいえない緊張感が電話越しからピリピリと伝わってくるのですが、その電話ではそれが全くなかったんです。
「保護活動者が引取るという事はその子は里子ではなく保護っ子という扱いになりますけど、それがどういう事かはご理解頂けてますか?」
ここで言った「それ」とはこういう事『里子は里子、保護っ子ではありません』なのですけど、案の定、分かっていなかったご様子で、そこからお話しをさせて頂いたのですけど、その間もずっといまいち会話がかみ合っていない気がして…
「~なので、先に引き取りと決めてお話しを進めていくより、今すぐ手放さなきゃいけない事情があるわけでは無いのでしたら、里親さん探しのお手伝いなども出来ますから、まずは詳しくお話しを聞かせて頂けますか?」
「あの、今、ネザーなんとかって大きい種類のフェレットが流行ってるの知ってますか?」
…業界側がそう言うから違和感無く使われているのは仕方が無い事なのですが、私はペット産業の場で「流行り」という表現を使う事にどうにもイライラします。
それはさておき、去年「日本初上陸!」としてネザーランドビッグラインフェレットという種類の子達が日本へ来てくれた時の事は皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか?
保護活動者達の間では「希少種(ファーム、カラー)の保護件数は極端に少ない」って統計がありまして、だからそのネザーランドフェレット入荷の話しが出た時には(もちろん見てみたい気持ちはあるけど)自分が活動者をあがる時には「ネザーランドっ子は結局一度も見たことない(=一件の保護も出なかった)って言いたいね」という話しで持ち切りだった事を私は覚えています。
だから、(こんなに早くその時がきてしまったか)って私はその流行りの子に安易に手を出して「やっぱり飼えない」の相談なんだと思って、「手放さなきゃいけない事になった理由をお話し頂けますか?」って聞きました。ら、
「あ、はい。あの、自分が今借りてるこの家がペットは一匹までって契約なんです。だからこの子を引取ってもらってからじゃないと新しい子を買えないんで。」
「んへ?」
思っていたのとあまりにも違い過ぎる答えが返ってきたので一瞬何を言われているのか理解が出来ず変な声が出ました。
「えっと…私ちょっと勘違いしていたみたいでごめんなさい。整理させて下さいね。」
何を言ってんだ?そんなの飼えない理由になるかよ!
- お店で見たネザーランドフェレットに一目惚れをしてお迎えしたくてしたくてたまらない気持ちになって、でも、マンションの契約で動物は一匹までしか飼えないから先住フェレットちゃんを里子に出すことに決めた。
- 二匹飼える所へ引っ越す余裕は時間的にもお金的にもないから考えてない。
- 里親募集サイトは変な人が多そうで嫌。
- 大切な先住ちゃんはちゃんとした所へしか渡したくない。
- フェレ飼いの知人から「ちゃんとした所」として私を紹介された。
その間に「自分フェレットめっちゃ好きなんっすよ、超可愛いっすよね」って何度も何度も言っていました。
それは本当の気持ちなんだと思います。
好きの感覚や重みは人によって違うし、「そういう考え方」の人っていますからね。
ただ、知らないどこか遠くにそういう考え方の人がいるのと今会話している相手がそうなのとでは話しが違います。
話しているうちに少し打ち解けてきてたし、その間に考えていたどういう風に伝えたら分かってもらえるだろうかも決まったので意を決して切り出した「あのね、ちょっと嫌な事を言うかもだけど聞いてもらって良いかな?」って私に「なんすか良いっすよ」って軽い…
「やっぱどんな理由があったって最後まで飼えないってのは無責任ですからね。一応、怖い人だから説教くらう覚悟決めてから電話しろって言われてたし、大丈夫っすよ、それでニュー(先住ちゃん)を幸せにしてもらえるならむしろ余裕っす」って彼は言いました。
(何だろう、これは…)
そこまで分かっていて、そこまでの気持ちがあるのに、どうして出した答えがそれなんだ?って、話せば話すほど「なんなんだろう…」って相変わらず噛み合わない感覚を拭えないまま話しを続けました。
保護活動とは…
改めてこうして文字にしてみても、彼の言い分はやっぱりメチャクチャです。
そして、こういう時、本来なら保護活動的には「即引き離す(とりあえず飼い主から離す)」のが正解です。
「理由はどうあれ手放すと一度でも口にした飼い主の元にその子を置いておいてはいけない、気が変わらないうちに隠される前に即引き離せ」は大体どこの現場でも鉄則としてそれがあります。
それは「活動者が常にその強い姿勢でいる事で守れる命が増えるから」なのですけど、これは、「活動者がブレたせいで死なせた子達がいる」って事です。
日本で保護という活動が始まってから、そういう理由で死なせてしまった命たちに誓って先人たちが「こういう時はこうするべきだ」って一から作ってきた活動者心得、長年かけてあっちこっちにそれは受け継がれてきているのでしょう。
私が所属してきた団体、知人の所、見てきた限りの全ての所でそれは「絶対」でした。
皆さん知っての通り、私はそれをしません。
私は私の考えで私の保護活動をしています…
保護活動者が広めてしまった「引き取って下さいは良い事」という認識
彼は前にも一度、彼の周りでも何人か、ペットを里子に出した事があるそうです。(フェレットだけでは無いです)
「保護活動の人が来て引き取ってくれた。」って言っていました。
その時、
- こんなに可愛い子とご縁を頂きありがとうございます。
- この子の幸せは私たちが引き受けます。
- お別れするのは辛い事なのに手放す決断をしたあなたは立派です。
というような事をいつも言われたんだそうです。
分かりますよ、私もそう言う時はあるから。
「その時、飼育権利放棄の承諾書にサインをしましたか?」
「なんすか?それ?」
「じゃあ…あなたは終生飼養の義務を果たさなかった飼い主としてペットを飼う資格が無いってお話しはされましたか?」
「はぁ?なんでそうなるんですか?飼えないなら引き取りますって言ってきたのはむこうですよ?」
会話が噛み合わない謎がやっと解けました。
人の考え方が変わらなきゃ永遠に保護動物は減らない
彼は「飼えなくなるなら出来るだけ早く次の幸せに繋げてあげるべきだ、ペットというのは寿命が短いんだから」として、「だから早く手放す決断をするのは良い事」だと思っていました。
「保護活動者はその為にいる」と思っていたし、「保護活動者はそれが仕事(=引き取りは活動者にとって嬉しい事)」だとも思っていました。
「可愛い我が子を手放すなら訳の分からない知らない人の所へではなく、ちゃんとしたそういう(活動者の)所の方が良い」って…
私自身がいわゆる王道の保護活動からズレているから言うわけではありませんが、「保護活動」なんて、それぞれが思う事を思うようにやれば良いとは思っています。
それが愛誤と言われるスタイルであってもご本人達がそれが動物のためだと思ってやっているのなら法律の範囲内で堂々とやっていれば良いと思います。
だけど、活動者を名乗ってその活動をするのなら、目の前のその子だけじゃなく、その先を、その周りを、見たうえで自分なりの指針を決めて動かないと永遠にこの状況が続くだけだって私は思うのですよ…
以前うちでも似たような事があったのですけど…
言わなきゃいけない事をきちんと言うのが保護活動者の仕事
精神疾患のある方が真夜中にメンタルを崩してペットの動物たちが危ないという超緊急でのレスキュー案件です。
書類も何も後からで良いからとりあえず、とにかく急いで生体確保が先って事で、それのみで動いてくれたボラさんから「元飼い主さんにあまり強い事を言わないであげて欲しいんですけど」と連絡がありました。
優しい方だから元主さんの精神状態をとてもとても心配していて、「フェレットは無事だったんだからもうそれで良いって事にしてあげられませんか」というような内容でした。
分かるんです、私はそのボラさんがどれだけ優しい人かを知っているから本当に分かるんです。
でも私はボラさんを叱りました。
私たちはただの便利屋ではなく保護活動者です。
今回たまたま生体が無事だったからってそれで良いやと私達が勝手に終わらせてしまったら、その人は自分が起こした問題にきちんと向き合う機会を持てないから、また同じ事をするかもしれない。
次に同じ目に遭った子は死ぬかもしれない、というより、同じ人に同じ事をさせてはいけないのですよ、保護活動者が入ったからには…
私だから怒ってるんじゃない
フェレットくらい内緒で飼えるという人もいるのに、件の彼は「マンションの規約を守らなきゃ」と考える真面目な人です。
フェレットが好きだから大切にしてくれる人の所へ行かせてあげたいって…
あー、もう、長くなってきたし、もう良いや。
あっちこっちに気を使ってウダウダグダグダ書いてきましたけど、ぶっちゃけますね。
彼はとても良い子っぽかったんです、ただ命に対しての感覚がズレてるというかなんというか…
だから私は「経験上そう思ってしまうのは分からなくも無いけど、それは間違ってるよ。これは私が保護活動者だからとかそういう事ではなく、「ペットを飼う」「ペットは命」「命を迎える責任」を人として今ここで考えて欲しいんだけど」って言いました。
保護活動とかやってる私の意見は参考にならないと言われたので「じゃあ、他の人の意見を聞いてみようか?あなたボコボコにされると思うけど大丈夫?」に「ボコボコって」って軽く笑ってたけど…
ほら、見てみろ!これが一般論だ!の巻
「こういう形でツイートするね」ってきちんと了承を得て出しました。
「フェレットの引取りをお願いできますか?」
「どうされました?」
「今ネザーなんとかって種類のフェレットが流行ってるの知ってますか?」
「里子に出される理由をお話し頂けますか?」
「この家ペットは一匹までって契約なんで、この子を引取ってもらってからじゃないと新しい子を買えないんで…」 pic.twitter.com/aX8L8DFGFo— 滝川(いたちのおうちの中の人) (@MaikoTakigawa) March 13, 2021
皆さんから頂いたコメントを「全部見ました。」って彼がボコボコに打ちのめされていたのは言うまでもありませんが、自分を肯定してくれる意見が一つも無かった事にとにかく驚いていました。
「自分だってペットはオモチャじゃない事くらい分かってます、だから大切にしてくれる人に引き取ってもらうために保護活動やってる人をわざわざ探してまで連絡したのに…」って、
ただ、私も保護活動者として謝りました。
「以前にあったそういうやり取りで活動者が誤解を与えてしまったのかもしれないけど、好きで保護活動やってる人間なんていない。保護しなきゃいけない子達がいるからやってるだけ。前の活動者が言ったありがとうございますは外に捨てずに自分たちを頼ってくれてありがとうのありがとうであって、里子をくれてありがとうじゃないから。気軽にポンポン活動者に渡せば良いだなんて、それこそこの子達をオモチャにするような事を保護活動者を名乗る人間がするわけないんだよ。それは分かってもらえるかな?」
「そうっすよね…」
「で、ニューちゃんはどうする?新しい子をお迎えするために飼育放棄する?」
「いや、飼育放棄ってそんな…」
「そんな…じゃないよ、手放すんなら飼育放棄として私はガッツリ書類とるからね。でもって、終生飼養の義務を果たさない飼い主が新しい命をお迎えするなんて事を私は許しませんよ?さあ、今の考えをはっきり自分の言葉で言って?」
「あの…ちょっと確認なんですけど、ニューが新しい家にもらわれていっても、教えてもらえないんですよね?」
「当たり前じゃん、まだそんなこと言ってんの?保護活動者を介したらニューちゃんはもう里子じゃないの!保護っ子なの!外に遺棄されてた子達と同じ保護っ子!飼い主の勝手な都合で里子に出す事さえしてもらえずただ手放された保護っ…
「無理っすね。ニューが外でさまよってる姿、想像したら涙でそうでマジきちいっす。」
「ネザーランドの子はどうするの?」
「いや、ニューをどっかやってまでは要らないっす。自分マジで引き取ってもらったら幸せにしてもらえるとしか考えてなくて、里親さんともこう…仲良くなれたりしていつかニューと新しい子を会わせたりできるのかなとか思ってたんすよね。」
「次の子が欲しいからこの子をもらって下さいなんて言う人と仲良くしてくれる里親さんなんかいるわけないじゃん。」
「いや、それは本当、自分が浅はかだったっす。マジで分かってなかったっす、すみません」
みたいな感じだったんですけど、お分かり頂けますでしょうか?
私、彼の家へ乗り込んで話しを直接してきたんです。
もちろんあまりにもあまりにもなら、その場でニューちゃんを取り上げてくるつもりで。
今日のお話し、モヤモヤが残る方も中にはいるかも知れませんが…
まとめ
保護活動者が上手いこと飼い主の機嫌を取りながら、とりあえず飼い主から生体を取り上げるというのは実はよくある事なんです。
「生体の無事確保」が最優先ですから。
ただそれは本当に上手にやらなければ後々に「だまし取られた」みたいなトラブルに発展する事が多々あります。
だから、そうやって逆恨みされたりトラブルになる事がないように「機嫌をとったままで終わらせる」活動者がいるのは何となく分かるんですけど、それじゃ全然、保護活動になってないって私は思うのですよ…だって今回の彼が良い例じゃないですか。
まぁ、確かに彼は、ちょっと機嫌を損ねたらややこしい事になりそうな風体ではあるから、強い事を言うのが怖かったのかもしれないなっては思いました。
世の中には好きな事だけ好き勝手にやってるいい加減な自称保護活動者もいるにはいますが、一生懸命やろうとしたけど、出来なかった場合だってあるよなぁって今回は思う事にします。
もうこれ以上は今後の活動に支障をきたしそうだから「だって~」は止めておきますが、これだけは知っておいて下さい。
私たち保護活動者は一般人です。
何の権限も無いし、何かがあっても何の保障もないし、どこかから守ってもらえているわけでもありません。
だから、ちゃんと出来ない事があ…って、いや、それはダメだな。
許して下さいねみたいにして終わろうと思ったけど、どう考えてもそれはダメだ。
ちゃんと出来ないなら活動者だとは名乗ってはダメ+。
ニューちゃんの飼い主さんみたいな考え方が「いいこと」「普通」として広まったら大変な事になってしまうからね。
って、もう、とっ散らかっちゃって全然まとめ方が分からないんだけれど、今回は…
皆さんが、間違った考え方を持ってしまっていた一人の若者に「ちゃんとした飼い主としての考え方」を叩き込んで(教えてあげて)くれていたんですよ!って、その報告!!
これからも「ダメなものはダメ」「そういう時はこうしたら良いよ」を教え合える言い合えるニョロリストの輪の力に頼らせて頂きますよ。
本当にありがとうございました!
健やかなニョロニョロ生活を☆彡