血液には、酸素や栄養分、免疫細胞を運んだり、老廃物を運び出すなどの多くの役割があります。
全身をめぐっている血液の検査データを見ることで、体の機能に関する多くの「今のその子の」情報を知ってあげる事が出来ます。
とは言え、私は実は、この検査を本当はあまりして欲しくない派です。
いくら少量とはいえ、こんなに小さな体から血を抜くなんて…って、それがとても恐ろしい事のように思えて仕方が無いのです。
でも、まぁ、そうとばかりも言っていられませんからね。
必要な時はその都度、きちんとお願いしてきました。
臨床検査とは?血液検査で分かる事
血液検査をはじめ、尿検査や高度な精密検査であるCT検査やMRI検査などの事を、一般的な検査(健康診断など)とは分けて、「臨床検査」といいます。
健康かどうかを調べる一般的な健康診断(検査)とは違い、病気の診断をする為の検査が臨床検査です。
ただの検査とはいえ、この子達のCTやMRI検査は全身麻酔をかけてからのそれです。
当たり前ですが、血液検査では血を抜きます。
生体への負担が「全くない」とは決して言い切れない「検査」なのです。(※尿・糞便検査は除く)
その上、「検査」というのは、あくまでも「検査」でしかありません。
それを受けたからと言って、病気が治るわけでは無いし、
それを受けたら、病気やその原因が必ず分かるというばかりでは無いのです。
やたらと検査をしたがる獣医さんがいるらしいというお話しを聞く事があります。
だからと言うわけではありませんが、本当にそれが必要な検査なのか、何故その検査をするのか、その検査をしたら何が分かるのか等きちんとその説明を受けて、あなたが納得してから検査は受けるようにしてあげて下さい。
「聞いたって分からないから」などと言って、全部を獣医さんに丸投げするのでは無く、あなたもちゃんと「その子の治療」にそういうところからきちんと考える事で携わっていってあげて欲しいのです。
その時には、
検査という物は「ある程度までしか分からない限界があるもの」だと知っておいた上で、でも、「病気を早期に発見できるかもしれない!」という期待も持って、
早く分かればその分だけ、早くから治療を始めてあげられる!「より良い治療方法の選択肢が持てるかもしれない!」という可能性があるものだって思っておいたら良いんじゃないかなって思うんです。
全血球算定で分かること
血液の中に含まれる血球(赤血球・白血球・血小板など)を調べる、いわゆる「一般的な血液検査」では、採血した血液を
検査機器にかける
特殊な方法で染色して標本を作って顕微鏡で見る
方法で「検査」をします。
これを全血球算定(検査)と言います。
それぞれの血球の役割
ヘマトクリット値(Hct)は血液の中に含まれる赤血球の割合をあらわす数値の事です。
赤血球(RBC)
酸素を全身に運ぶ役割です。例えば、貧血を起こしていると赤血球が減少します。
数値やその詳細はまたいつかの機会に書いてみようかとも思いますが、赤血球を表す項目としては
赤血球数(RBC)、赤血球容積比(PCV)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球色素濃度(MCHC)、平均ヘモグロビン量(MCH)などがあります。
また、貧血や糖尿病に関連している「ヘモグロビン(Hb)」は、この赤血球の中に含まれる物質の事を言います。
白血球(WBC)
「白血球」の中にはさらに、
- 好中球(BandNやSegN)
- 好酸球(Eos)
- 好塩基球(Bas)
- リンパ球(Lym)
- 単球(Mon)
など、免疫機能に大きく関係する役割を持つ数種類のものがあり、例えば、感染症などの病気があると「白血球」の数が増減します。
更に、その
リンパ球の数や形に異常がみられる場合には「リンパ腫」を疑い
フェレットのリンパ腫とは?その症状や治療法【わさびの療養記録7日目の画像】
下アゴがポコっと腫れて、歯根膿瘍か口腔内腫瘍か 治療とその判断を兼ねて2週間効き目がある抗生剤を投与してもらったワサビ君 ...
好酸球が増えていたら、「好酸球性胃腸炎」を疑い
フェレットIBDとは?【痩せる・ウンチが変…原因不明?】その症状もしかして炎症性腸疾患(好酸球性胃腸炎)では?
IBDとは一般的(医学的)には、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis=大腸に慢性的に炎症が生じ、潰瘍ができ ...
好中球が増えていたら、「播種性特発性筋炎」を疑うなど、
それら白血球の種類がどのような割合で存在している(増減している)かを調べることで分かる病気もあります。
血小板(PLT)
出血した時にそれを止めてくれるのが血小板の役割です。
血液中でこの血小板が増えすぎると血栓症(血液が詰まる)になりやすくなり、人間でいうところの脳梗塞や心筋梗塞の原因ともされています。
また逆に、減少がみられる場合には悪性貧血や再生不良貧血などの疑いが出てきます。
フェレットが貧血!その理由や対処法は?輸血・供血について
元気がなくいつもグッタリして見える、すぐ疲れちゃうように見える、といった、ニョロリンを詳しく検査してみたら、実は、「貧血 ...
血液生化学検査で分かること
血液は細胞成分(血球など)と液体成分(血清、血漿(しょう))に分かれます。
血液生化学検査とは、血液を遠心分離機にかけて血清を分離し、中に含まれるタンパク質や糖質、酵素などの成分を調べる事を言います。
我々人間でもよく知られている、俗にいう「血糖値」や「コレステロール値」などは、この検査によって分かるものです。
以下、それらの指標が表す項目の一部です
体液バランス
ナトリウム(Na)
カリウム(K)
クロール(Cl)
カルシウム(Ca)
リン(P)
腎臓機能
血中尿素窒素(BUN)
クレアチニン(Cre)
栄養状態
総蛋白(TP)
アルブミン(ALB)
グロブリン(GLOB)
肝臓機能
総ビリルビン(T-Bil)
アルカリフォスファターゼ(ALP)
アスパラギンアミノトランスフェラーゼ(AST(GOT))
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT(GPT))
アンモニア(NH3)
ガンマGT(GGT)
糖代謝
グルコース・血糖値(Glu)
脂質代謝
総コレステロール(TC(T-Cho))
中性脂肪(TG)
※注意してあげて欲しいこと
ここまでをサラサラっと「その指標」として書き出してみましたが、当然の事ながら、上記が全てではありません。
さらに、これらが「その限り」という事でもありません。
これは例えば、
体液バランスを表す指標項目にある
ナトリウム(Na)やカリウム(K)
これらは生命維持に大切な電解質をさす物なので、この数値に異常が見られた場合には「代謝異常」という事にはなりますが、この数値が高い時には「腎疾患」の疑いが持たれたり、その他の疾患を知らせてくれる物だったりもするのです。
また、栄養状態の指標項目にある
グロブリン(GLOB)
これはタンパクの1つです。総蛋白値(TP)からアルブミン値(ALB)を引いて、その数字とALBの比率を見て、それが基準値以下の場合には何らかの異常(感染症や腫瘍)を疑う等として、免疫にとても重要な意味を持つ物ですが、血液検査そのものでその数値を出すわけでは無いものです。
「栄養状態の指標」が病気の有無の可能性を探る大切なデータとなる場合だってあるのです。
「指標」は、あくまでも指標(目安にするだけの目印)
先生が「その子のデータとして今は必要が無い」と思ったものはデータとして記していない事もあるでしょうし、その子のデータとしてその時に必要があれば、もっともっと細かく分類項目を設けたデータを出してくれる事もあるでしょう。
項目が少ないからと言って「検査に手を抜かれた」なんて思うような物では無いし、また、項目が多いからと言って病気の可能性を恐れたり、過剰に不安になったりするような物でも無いのです。
データというのは、それを元に「これがこうだからこうじゃないか」と、もしかしたら何らかの疾病ではないかというその種類の可能性を探っていくための手がかりでしかないのです。
病気というのは「この数値がこうだからこう」などと、単純にその数値と答えとが繋がってくれる物ばかりでは無いって事を、私たち飼い主は知っておいてあげなければいけないのです。
わさび君のこと
上記であげた腎臓機能の指標「尿素窒素(BUN)」の数値がとても高いです。
フェレットの腎臓病・腎不全【原因・症状】一般血液検査では分からない尿素窒素BUN(生化学検査)
フェレットはシニア期(4才くらいから)に入ると一気に病気が増えます。 「腎臓病」「腎不全」も、その1つです。 腎臓病と腎 ...
思うところがあって、かかりつけ医じゃ無い先生にも診てもらってきました。
かかりつけの先生が信用できないとかではありません。私個人の勝手な判断です。
その辺りの事情や、今、飲んでいるお薬の事などはまた今度ゆっくり聞いて頂こうと思います。
が、今日のアイキャッチ画像通り、変わらず元気な可愛い姿を見せてくれているので、どうか安心して下さい。
話を戻します。
他にもある血液検査
一般的にいわれる「ホルモン検査」とは「血液中のホルモン値を測定する」ことを言います。
要するに「血液検査」です。
副腎疾患があるフェレットは性ホルモンなどのステロイドホルモンが上昇し、インスリノーマではインスリンというホルモンの1つが上昇します。
また、「抗原検査」や「抗体検査」というのは、「血液中の抗原や抗体の存在を調べる」検査です。
抗原…体内に入ってきた異物
抗体…抗原に反応してできる分子
ある種類の抗原にはその抗原にだけ反応する抗体が作られます。
この子達では、ジステンパー
フェレットの予防接種【犬ジステンパー】混合ワクチンって?効果や副作用(アナフィラキシー)
俗にいう「ジス」 これは「犬ジステンパーウイルス」の感染によって起こる病気ですが、イヌ科、イタチ科、アライグマ科、ネコ科 ...
や
アリューシャン病
フェレットのアリューシャン病とは?パルボウイルスの感染が原因だけど、犬パルボとは無関係です!
フェレットにジステンパーワクチンを打つなんて愚かな飼い主でから無駄死にするフェレットが絶えない。それでブログ書いて恥ずか ...
の「抗体検査」や
フィラリア
フェレット【フィラリア(犬糸状虫)症とは?予防薬のお値段は?】予防の時期が始まりました。
フィラリア症というのは、フィラリア(犬糸状虫)という線虫の寄生によって起こる病気で、犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)症とも ...
の「抗原検査」などがありますが、これらも全部、血液検査の一種なのです。
防いであげられる病気は全力で防いであげて下さい。
なってしまった病気にだって、クヨクヨなんてしないであげて下さい。
…これは自分に言っています。
検査結果のデータはクヨクヨするためのものじゃなくて、「じゃあ、どうしてあげたら良いかな」って考えてあげるための材料だって思う事にしています。
一秒でも長く、楽しいな♡って言ってもらえる幸せな時間が続けられるように、わさび君にとって一番良い事は何かを考えてあげていきたいって思っています。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡