IBDとは一般的(医学的)には、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis=大腸に慢性的に炎症が生じ、潰瘍ができる原因不明の病気の事)とクローン病(Crohn's Disease)のことをさします。
これが「フェレット(に限らず獣医学的な)の」という事になると、今度は「炎症性消化管疾患」の事を表したり、「炎症性腸疾患」の事を指したりと、その表示がサイトや何かによってマチマチだったりもするようですが、そこは神経質にその違いを考えるような問題ではありません。
フェレットのIBD とは「一般的なそれとは別物(医学的なものと獣医学的なものではその定義が違う)」という事と、その詳細は後述しますが、「炎症性腸疾患というのは消化管(主に腸)に起こる病気」という事だけ先に頭に入れて、この先をお読み頂ければと思います。
その根拠にして下さいって、それとこれとはまたちょっと話が違うのかも分かりませんが、(人間用の)炎症性腸疾患のガイドラインを作成しているのは日本消化器病学会です。
【参考資料】
※消化管とは: 口腔から始まり、咽頭・食道・胃・小腸・大腸を経て肛門までの一条の管。 食物の消化・吸収を行う箇所その全てを指します。
その他の消化管の疾患については
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などを参考にして頂ければと思います。
フェレットの炎症性腸疾患(IBD)とは
炎症性腸疾患とは消化管に慢性的に炎症が見られる病気のことで、
- 食物アレルギー
- ウィルス性
- 寄生虫感染
- などの
- 消化管(特に胃腸)の免疫機能に刺激を与えるような物質
が原因として考えられています。
軽度の場合は無症状のことが多く、症状が進むと
- 痩せてきたり
- 歯ぎしりをするようになったり
- 口元を前足で気にするような仕草をみせ始め
重度になると
- 軟便
- タール状の粘液便
または
- 水下痢や
- 緑色の便
になります。
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と考えられているリンパ球形質細胞性の炎症性腸疾患と、好酸球性胃腸炎の2つのタイプがあり、
消炎剤やステロイドの投与
などが一般的な治療となります。
ステロイドが効かない場合や長期に渡ってのそれで副作用の心配などが出る場合には免疫抑制剤が使われることもあります。
IBDが「消化管」の病気とされるわけ
IBDは胃および腸に障害を与え、重度の場合には消化機能に影響し、体重の減少を見ることもあります。肝臓に炎症を起こすことも多く(肝炎を生ずるフェレットの多くはIBDを併発している)、この炎症が上行性に食道におよぶこともあります(巨大食道症の一部はIBDと直接的な関連が疑われる)。炎症により胃の収縮が弱まり、胃内容の排出が遅れ、その結果IBD罹患フェレットはより毛球症も起こしやすくなるとされます。
引用:フェレットの医療情報「炎症性腸疾患」
等々と言われていて、要するに、
「腸だけ」の問題にとどまらず、「消化管のどこにでも炎症を引き起こす事があるから」とお考え頂けたらと思います。
好酸球性(こうさんきゅうせい)胃腸炎とは?
体重減少や下痢などが見られる病気で、その原因は解明されていません。
特定の病原菌なども発見されておらず、
食物アレルギー、あるいは寄生虫感染が原因じゃないか等と言われています。
好酸球とは
- アレルギー反応が起きているところに集まったり、
- (寄生虫感染があるときには)増殖して、寄生虫を退治しようとする働きを持つ
白血球のうちの一種です。
症状や診断方法
上で述べたように、
慢性的な体重の減少
食欲不振
下痢
などがその症状として挙げられます。
それらの症状が出ている時に、この好酸球が増えていることを血液検査で確認したり、
また、好酸球で侵された胃腸の患部の組織を生検するなどして、
この病気かどうかの判断をします。
治療は?
寄生虫の感染があるなら先ずは駆虫です。
アレルギー反応で炎症を起こしているならば消炎剤の投与です。
胃や腸が炎症を起こしているわけですから、胃酸抑制剤や整腸剤を併用しての治療となる事が多いです。
その後、詳しいアレルギー検査※などをしてもらう事もあり、可能ならばアレルゲンの除去…と言ってもその大半はそのアレルゲンを避けるよう飼育指導になると思います。
例)食物アレルギーが認められた場合はその食材を遠ざけるようにという指導
ただし、上記のように、「その詳細を特定できるレベルではない」検査である事なども理由の1つとして「アレルギーの検査までは必要無い」とする事も多く
その場合、動物病院ではロイヤルカナンなどの療養食のフードなどに切り替えてみることを勧められるというお話しを耳にします。
が、いずれの場合においても、IBDと診断された時はステロイドの投与が一般的な治療として行われます。
※アレルギー検査
すべての病院がその検査をその場で出来るとは限りません。
大きい病院に検査に回したり、またその先生の判断で「その必要はない」とされる場合もあります。
アレルギーについては、こちらの記事など参考にして頂けたらと思います。
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予防するには?
原因がハッキリしていない以上、完全な予防策というのはありません。
定期健診や日ごろの健康チェックなどで、
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寄生虫感染の有無やアレルギーの有無…ちょっとした変化の「様子がおかしいかな?」にすぐに気づいてあげられると良いんじゃないかなって思います。
これはIBDに限ったお話しではありませんが、胃腸に炎症が起きることによって、長期的な食欲不振や慢性的な下痢などの症状で衰弱してしまう事が一番怖いんです。
特に、IBDと呼ばれる病気は慢性化しやすく、そうなると、生涯に渡って治療が必要となったりします。
その場合でも、上手に付き合っていけば良いだけなので、過剰に怖がる必要はありません。
でもだから、できるだけ早く気付いてあげて、少しでも早くから治療をしてもらってあげて欲しいなって思います。
症例として
リアルニョロ知人から直接聞いたお話しでは、
実際の症例
- ツブツブウンチの回数が増え、下痢をする事が多くなってきたニョロリン
- 気が付いたら100g以上体重が落ちていて(最初は夏痩せか何かだと思っていたそうです)
- 体重減少により体力が落ちてしまったからか、この病気の症状なのかは判断できませんが、自力で食事をするのを嫌がるようになってきたのを見かねて
- 病院で何度も色んな検査をした結果
- IBDだと診断される
- 原因は食物アレルギーだと判明
- 詳細を調べて分かったアレルゲンは「とうもろこし」
- 治療を終えてからは穀物不使用のフードだけを与えていて来月、元気に5才のお誕生日を迎えるそうです
もちろん、これは、この子の場合が「とうもろこし」だったというだけの話しであって、チキン※や魚に対するアレルギーを持つニョロリンだっていますし、フードの保存料などといった「化学物質の刺激」もIBDを誘発する可能性があるという指摘もあります。
その可能性が疑われた子は動物病院でヒルズの低アレルゲン食のフードを勧められたそうです。
こういう事は、色んなタイプがありますので、かかり付けの獣医さんときちんと相談して、その子に一番合う物、一番合うやり方をきちんと探してあげて下さいね。
この病気の注意点
IBDは他の病気と併発することが多いと言われていて、
副腎腫瘍やインスリノーマのフェレットの30~50%にIBDが見られるという報告があるそうです。
そして、このIBDは、その副腎腫瘍やインスリノーマ
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による体重減少や低血糖などの症状を悪化させる要因の1つとされています。
よって、IBDの治療を積極的に行うことが、その他の病気と闘ったり、上手に付き合っていく事のキーにもなってくるんじゃないかと思います。
早期に発見して前向きに治療に取り組んであげて下さいね。
また、炎症性腸疾患(IBD)の原因とされる寄生虫の代表例は
ジアルジア
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や、コクシジウムだったりします。
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※もちろん他の寄生虫の場合もたくさんあります。
まとめ
大人痩せや夏痩せ以外で、理由が分からないまま体重が減り続けるような状態は、いくら元気に見えても異常な状態であると思ってあげて下さい。
上記で症例としてお話しを聞かせてもらったニョロリンも、便に異常が見られるよりも前の段階で「歯ぎしりをしたり、手で口を引っかく」などの行動があったような気がすると飼い主様が言っていました。
歯ぎしりや口を引っ掻くような仕草は「胃の不快感」からきていた行動だと推測できます。
注意!
- 歯ぎしりはどこかが痛い時などにもします
- 口元を引っ搔くような仕草は気持ち悪い(吐き気)などです
この病気もかなり進行するまで、
「無症状でいることが少なくない」と言われていますので、何か少しでもそれらしい症状、気になることがあったら、なるべく早くお医者さんに連れて行ってあげて欲しいと思います。
健やかで楽しいニョロニョロ生活を☆彡