俗にいう「ジス」
これは「犬ジステンパーウイルス」の感染によって起こる病気ですが、イヌ科、イタチ科、アライグマ科、ネコ科など、ほとんどの食肉目の動物に感染する病気です。
2014年末から2015年初頭にかけて中国の研究施設で飼育されていたジャイアントパンダ(食肉目)がジステンパーに感染して死んでしまったというニュースは記憶に新しいかと思います。
⇒CNN「中国でパンダを襲うウイルス 2頭死亡、3頭目も重症」
フェレットは特に感受性が高く(若ければ若いほど高い)、感染するとその致死率は100%だと言われています。
早ければ感染して2~3週間のうちに亡くなってしまうという症例もあります。
ウイルスが体内に入ると最初にリンパ系に入って増殖し、そこから血流に乗って全身に広がり、呼吸器や消化器、中枢神経などに症状を起こします。
7~10日ほどの潜伏期間の後、発熱、食欲がなくなる、元気がなくなる、ネバネバした目ヤニや鼻水、くしゃみ等の症状が出ます。
その後に、発疹が唇や顎や鼻に出来てきて腫れたり硬くなったりします。
その時には肛門や鼠径部に皮膚炎なども起きてきたりします。
ハードパット(肉球が茶色く硬くなる)を起こし始め、進行すると肺炎を起こして咳がでるようになったり、痙攣や興奮などの神経症状も出るようになります。
感染経路は感染した動物の唾液や鼻水などの飛沫、排泄物、共有するオモチャについてる分泌物などの接触感染と空気感染です。
飼い主さんが犬ジステンパーに感染した動物と触れ合った場合、その衣類、靴、自身の手などの皮膚から、自分のニョロリンへ感染させてしまう場合もあります。
先日のこちらの記事の表現で誤解された方がいるようで…大変、申し訳ありませんでしたが
フェレットの病気予防の正解って?【フィラリア・ジステンパー他】蚊は何階までやってくる?
職業柄、「氣」を扱うその道のプロの方とお話しをさせて頂く機会がよくあります。 私も一応、その末端の端くれくらいにいます。 ...
ジステンパーは蚊の媒介で感染する病気ではありません。
「蚊さえ避けていれば病気にならない」なんて話しでは無いのです。
ジステンパーのウィルスというのは一年中その危険を考えて気を付けてあげなければいけません。
だから、その子に合わせたタイミング(移行抗体の時期)でワクチン接種をするのです。
1987年~88年にかけて、シベリアのバイカル湖でアザラシが大量に死にました。
これは犬ジステンパーで亡くなった数匹の猟犬をハンターが湖に遺棄し、それをバイカルアザラシ(食肉目)がつついた事が原因じゃないかとされました。
その最中に捕獲されたアザラシが日本の水族館に導入されたという事でちょっとした問題にもなったので覚えている方も多いかと思います。
⇒CiNii 論文「水族館のアザラシに発生したイヌジステンパー様疾患」
バイカル湖湖畔にもそりゃ蚊くらいいるのかもしれませんが、この時も上記のジャイアントパンダの時も極寒の真冬の時期でもありました。
「蚊だけ気を付けていれば大丈夫」だなんて話しはどこにも無いって思っていてあげて下さい。
ワクチンの仕組み
まず、私たちの良く知る例でお話しさせて頂くと
インフルエンザの予防接種というのは、
インフルエンザに感染しない為に外側に張るバリア的な作用があるわけではなく
「インフルエンザウイルスに抵抗出来る体を作ろうね(抗体を持って免疫力をあげる)」っていう内側の何かに作用をさせるような物です。
ワクチンを接種すればその病気になる危険性を非常に高い確率で予防することができますが、100%ではありません。
体質によっては充分な抗体が作られない場合やその可能性もあるのです。
だから
「予防接種を受けていたのにインフルエンザにかかった」なんて事があるのも不思議な事ではありません。
これは、接種したワクチンと流行ったウイルスの「型が違った」という理由の場合もありますが、そうでは無い場合は
「少しでも抗体が出来ている事で、かかった時の症状が軽症で済んだ」これでもう充分に
「その効果があった」と言えるべきものなのです。
ジステンパーワクチンについて
上記のように、ワクチンというのは無毒化または弱毒化させた病原菌を接種して、そのウイルスに対する免疫をつけておこう!という物です。
感染した後にそのワクチンを接種しても意味がありません。
だから「予防接種」と言うのです。
ワクチンの効果をより確実にするために、そのウイルスへの抵抗力がどのくらいついたのかを調べる抗体価検査をする病院もあります。
抗体価が上がらない時には再度ワクチン接種をしたり、異なる種類のワクチン接種を検討する必要があると言われますが
これについては、私個人の考えとして生体への負担などから「嫌です」と拒否した事の方が多いです。
犬用(2種・3種それ以上の混合)ワクチンとは
犬用のワクチンに「ジステンパーのみ」という専用のものはありません。
犬パルボウイルスや犬アデノウィルスなど
フェレットには感受性のないウイルス用の抗原(抗体を作るための物質)も2種か3種、またはそれ以上入っています。
それが「混合ワクチン」です。
※フェレットのアリューシャン病を引き起こすパルボウイルスは「犬パルボウイルス」とは別の種類なので、このワクチンを打っても効果はありません。
アリューシャン病についてはこちらを参考にして頂けたらと思います。
フェレットのアリューシャン病とは?パルボウイルスの感染が原因だけど、犬パルボとは無関係です!
フェレットにジステンパーワクチンを打つなんて愚かな飼い主でから無駄死にするフェレットが絶えない。それでブログ書いて恥ずか ...
フェレットのジステンパーワクチン事情についてはこちらの記事のその項目に書いた通りなので、そちらを参考にして頂ければと思いますが、
だから、ニョロリンを絶対に外へは連れて行かない、自分も他動物と一切接触をしない、などで
感染させてしまう可能性が100%無いという飼い主さんが
- そんな余計な抗原を接種させたくない
- 副作用(アナフィラキシー)の方が怖い
- ワクチン接種で発症する可能性もある
などの考えらる全ての理由を考慮した上で、
ワクチン接種をしないというのは全然ありだと私は個人的には思っています。
アナフィラキシー(急性アレルギー反応)
ワクチン接種後に、多少元気がなくなるのは通常の反応です。
その日は安静に過ごせるように気を付けてあげていれば問題はありません。
ただ極稀に、ワクチン接種後に下痢や嘔吐、発熱や呼吸困難などの急性アレルギー発作を起こすことがあります。
これがアナフィラキシーショックといわれる症状です。
だから、ワクチン接種後は少なくても30分は病院内やその近くで様子を見ていてあげなければいけないのです。
これは30分経過したらO.K.という事ではありません。
ニョロ友から「1日経ってから(24時間くらい経過した後に)その症状がでた」なんて話しを聞いた事もあります。
その場合、正確には「アナフィラキシー性ショック反応」という扱いではありませんが、
何らかの要素とそれが合わさって「具合が悪くなった」という事に変わりはありません。
Twitterでご意見を頂きました。
先代は、アナフィラキシーで入院しました。 でも、先生と相談して毎年打ち続けていました。 私の周りでは、重篤なアナフィラキシーは何件もあります。 摂取後、24時間は気にかけてあげてください。
くれぐれも注意してあげていて下さい。
ワクチン接種による発症
「考えにくい」とはされていますが、
ワクチン接種によってジステンパーを発症する可能性は0ではありません。
病原体を接種するというワクチンの仕組みから考えたら、それはあり得ない話では無いのです。
それでも、ワクチン内のそれは弱毒化されている物なので、それほど心配する事ではないとされています。
ただし、免疫力が低下していたり体調が悪い時などはこれに当てはまらないので、充分に注意が必要です。
ワクチン接種は体調が万全の時以外には絶対にしてはダメです!
それは人間も同じなので
⇒厚生労働省:インフルエンザQ&Aなどを参考にして頂ければと思います。
ワクチン接種の時期、移行抗体とは?
生まれたばかりの動物は母親の初乳(出産後数日の母乳。これは免疫物質に非常に富むものです)から抗体を受け取ります。
これが移行抗体といわれるものです。
この移行抗体は自身の免疫機能が発達するまでの間だけが有効なもので、成長とともに失われていきます、それとともに免疫力が低下していくのです。
この時です!このタイミングがワクチン接種のベスト時期です!!
移行抗体が体にたっぷり残っている時にワクチンを接種してもワクチンが負けます。
抗体なんか作れません。
母乳の力はすごいのです。「お母さん」という生き物はそれだけ偉大だという事です。
逆らってはいけませんよ!もうすぐ母の日ですからね、親孝行して下さいね。
話しを戻します。
この移行抗体が減少し始める時期に1回目のワクチンを接種します。
一般的には
生後6~8週目と言われているので大体のニョロリンはそれぞれのファームでその接種を受けてます。
生後10~12週に2回目
生後13~14週に3回目
4回目以降は年に一度ずつが望ましいと私は授業で習いましたが、
これは動物病院の先生によって少しずつ考え方や方針が違い、その時期にも差があるという事が分かりましたので
それぞれが、かかりつけの先生の方針をよく理解したうえで、
飼い主様がそれに納得出来てから、その判断をしてあげるのが良いかと思います。
いずれにしても、ワクチンというのは間隔を開けて何度か接種することで、より効果を発揮するものだと覚えておいて欲しいのです。
こんな風に
一度作られた免疫物質が再び対象のウイルスにさらされることで
免疫というものが、より高まっていくのだと覚えておいてあげて欲しいと思います。
こちらの表(イラスト)はフェレット作家の「いたチカ」さんが、この記事に合わせてわざわざ書いてくれました。
すっごい可愛い♡分かりやすい!!嬉しいです。
いたチカさんには以前、我が家の可愛いフェレっ娘エルちゃんを擬人化したカワユスを描いてもらった事もあるのです。
デザフェスとかクリマとかのイベントって創造神と出会える場所って事だよね?対面販売が苦手なあなたに神より朗報!!
デザインフェスタとかクリエーターズマーケットなど、そういうイベントというのはヒキヲタの私が知らないだけで(規模の大小はあ ...
いつもありがとうございます。
ジステンパーに感染したら致死率は100%だと思っていてください!
ちょっと調べたらすぐに出てくるのでご存知の方も多いですが
「ジステンパーを発症して助かったフェレットがいる」というお話し。
これは本当の事ではありますが、その詳細を知る事なく、この字面だけが一人歩きして
「ジステンパーは治る」と誤解されている飼い主さんがいるのは非常に怖い事です。
回復したのは、「抗体を持っていた」からです
ジステンパーを発症して回復したニョロリンのお話しを飼い主様のブログで読みました。
知り合いの獣医や動物病院の先生に電話をかけて、
いくつかその他の症例について2例ほどですが確認をとりました。
どの子も皆、頑張って回復したニョロリンのお話しです。聞いていて、読んでいて涙がボロボロ出ました。
ニョロリンのこの小さな体が一生懸命に頑張ったお話しです、
飼い主様もそれはそれは頑張ったんだと思ったら泣けて泣けてどうしようもなかったです。
偉かったね、頑張ったね、良かったねって直接ワシャワシャしに行きたい気分です。
長くなるのでそれについてはこの辺で止めておきますが、
私が確認したニョロリンはどの子も皆「ワクチン接種をしていた子」だという事が分かりました。
ワクチンの効き目とはこういう物
ワクチン接種をしているのだから、その病気にはならずに済むのが一番の理想ではあります。
ですが、上記のようにワクチンとはバリア効果があるものではありません。
元々の体質によって抗体が上手に理想値まで作れない子もいます。
それでも、ある程度までは…少しとはいってもその少しでも、その抗体があったからこそ
その症状が軽く済んで、みんな回復出来たのです。
「抗体があったからといって必ずしも回復できる子ばかりでは無い、むしろ死んでしまう子の方が圧倒的に多い」と言われました。
だから、回復できた子達の例を入れたとしても、その致死率は限りなく100%に近い
「言えたとしても99.9…%としか言えない」と言うのが、とある獣医さんのお言葉です。
ジステンパーに有効な治療方法はありません
治療方法が無いので、二次感染を防ぐために抗生物質を投与したり、輸液や栄養管理などの対処療法が中心になります。
ホメオパシー治療やインターフェロン治療は免疫力や抵抗力を上げてあげるための治療です。
抗体を持った体でさらに免疫力を高めてあげる。
それで回復できた子達がいるのですから、これは是非やってあげるべき治療だと私は思います。
そして、その時期は早いに越したことはありません。
ジステンパーの初期症状は風邪のそれに似ています。「風邪かもしれない」なんてノンビリしていてはいけない時があります。
体力が無くなってしまってからでは遅いのです。
風邪の初期症状についてはこちらなど参考にして頂けたらと思います。
フェレット 風邪の初期症状は分かりづらい【斜頸(首が傾く画像あり)口呼吸で鼻カサカサ…】早期発見のポイントと対処方法
初めまして!!いつもいろいろ!!!参考にさせて頂いてます!!! そこで!!1つ疑問に思う事があるんですが!!! フェレッ ...
本当に、早めの受診と検査を心掛けてあげて欲しいと思います。
検査で「陽性」が出ても、「ジステンパーに100%感染してる」という事ではありません!!
ジステンパーの検査というのは「段階評価」の場合が多いです。
どんな検査でも5段階評価の「3」までは「微妙」というのが通説です。
フェレットがジステンパーの検査をしたら「2」とか「3」とかって結果になる事が多々あります。
それは接種したワクチンの抗原に反応している場合があるからです。
1回の抗体検査で陽性だったからと言って必ずしもそれが、ジステンパーに感染しているという事では無いのです。
更に1か月の後の再検査によって抗体価を調べて、より確実な診断結果を得たりするくらい微妙な検査だったりするので、
その結果が陽性だったからと言って、即座に絶望したり安易に安楽死を選択したりしないであげて下さい。
これは他の検査でも言える事です。
仮にその結果が「5」だったとしても、それは、「今すぐその病気で死んでしまいます」って意味ではありません。
病気を理由に命を簡単に諦めたり、目を背けたりしないであげて欲しいのです。
終生飼養の責任は必ず持っていて欲しい大事な覚悟。「終生飼育」と「安楽死」
平成24年9月に動物の愛護及び管理に関する 法律の一部を改正する法律(改正動物愛護管理法)が公布され、 平成25年9月1 ...
普段から免疫力を高めてあげよう!
先日こちら、マルママッサージの記事でご紹介させて頂いたハーブボール
フェレットとマッサージが受けられる!マルママッサージって?ペットの健康はまず飼い主から!!
最近、出会った若いスピリチュアル系の知人が言いました。 「飼い主とペットはリンクしてるからね!」 ああ、なるほど!そう言 ...
実はこれにも免疫力を高めるという効果があるそうです。
⇒とみかわひろへさんのブログ「マルママッサージをもっと広めたいんだよ~」にその記述がありました。
トロ~ン
ママの抱っこでハーブボールの施術を受ける
寿々丸くん
ポカポカ気持ち良いし
免疫力も上がるんだって♪
良い事ばっかりだね♡
アニマルコミュニケーションで感想を聞いてみた
この時の事を後に私がアニマルコミュニケーションで
「気持ちよかった?」って聞かせてもらったのですが、
寿々丸くんは
「う~ん…もっと見たいのとかあったのに、あれをすると、うっかりウトウト眠っちゃいそうになるからなあ~」って、
何だかちょっと腑に落ちないようなご様子でした。
そう言えば、前にお話しをさせてもらった時も
「もっと色々見たい物があったんだよなあ」って言っていました。
皆で遊ぶことよりも、色々
「見てまわるのが楽しい♪」って、探検が大好きなニョロリンです。
飼い主様いわく
「寿々丸は、雑誌でも何でも見に来る子。だから、家と違うお部屋で色々見れて楽しかったんだと思う。」との事でした。
動物たちは
「免疫力を高めるために色々やらなきゃ!」なんて思っていないのでしょうね。
そうしてあげようと思ったら、是非、飼い主であるあなたが積極的にドンドンしてあげて欲しいなって思います。
今日のアイキャッチ画像はハーブボールの施術を受ける飼い主様の様子を見守っている寿々丸くんです。
やっぱり「見ている」のが好きなようです。
キャリーでグッスリのエルの事も
こうして何度も見に来ていました
エルと仲良くしてくれて
ありがとう♡
ちょっと天然でマイペース、すっごく可愛い男の子です。
しつこいようですが…蚊にも気を付けてあげて下さい
「予防できるフェレットの病気」という事で「フィラリア」と「ジステンパー」がゴッチャになっている飼い主さんがおられるようです。
毎年、蚊が発生するこの時期にそういうお問合せが届くのですが、この2つは全く別の病気です。
感染ルートも予防薬も違います。
フィラリアについてはこちらの記事など参考にして頂ければと思います。
フェレット【フィラリア(犬糸状虫)症とは?予防薬のお値段は?】予防の時期が始まりました。
フィラリア症というのは、フィラリア(犬糸状虫)という線虫の寄生によって起こる病気で、犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)症とも ...
Twitterでのご意見、寿々丸くんの飼い主様、フェレット作家のいたチカさん、マルマセラピストのとみかわひろへさん
すべて、こちら(フェレット専科)にてspecial thanksです。
ありがとうございました。