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境界知能「危ないからダメ」が伝わらない飼い主さんには

2024年7月31日

SNSを見ていたら、鼻を真っ赤にして口呼吸をしている猫の動画が流れてきました。

気温は35℃を超える猛暑日に人混みでごった返す大賑わいのイベント会場での一コマでした。

「そんな人混みに猫なんか連れて行ったら可哀想ですよ」

「ストレスになるからダメですよ」

「この暑さの中で何を考えてるんですか?」

「口呼吸になってるのが見て分からないですか?」

「猫が口呼吸している時は…」

等々と、その猫ちゃんを心配するコメントがものすごい数ついていましたが、ご本人は「心配ないですよ」って、彼女なりのその理由を添えて。

この子の事を一番よく分かってるのは自分だから「この子の事をよく知らないのにゴチャゴチャ言ってこないで下さい」とも返されていました。

あまりにも素っ頓狂であっけらかんとしたそれらの対応に、そのうち、「インプレッション(閲覧)稼ぎの炎上商法かよ!」「自分が注目を浴びれれば猫はどうなっても良いと思ってるんだな!」って、心配を通り越した先の怒りや罵倒に発展してしまっている場面の方が多く目に入るようになった時、私は(違う、そうじゃない。この人は多分きっと…)って、その時に思ったことを今日は書いてみようと思います。

この先、皆さんがもし、直接そういう方とお話をする事になった時、「自分ならどうするか」を考えて頂くきっかけになれたら良いなと思います。

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境界知能の飼い主さんに「危ないからダメ」を伝えるにはどうしたら良い?

SNSで見かけたあの方が境界知能の方なのかどうかは分かりませんので、ここからは「一般論」としてまず

境界知能とは

知能指数(IQ)が70~84で、知的障害の診断が出ていない人の通称として使われる言葉です。IQは一般にIQ85〜115が平均的とされ、70未満の場合には「知的障害」と診断されます。境界知能はこの平均的な層と知的障害とされる層の境目にあたり、IQが平均より低いために日常生活で困難が生じることがあるものの、「知的障害」とは診断されないので、公的な支援は受けられません。

境界知能に該当する人は日本人全体の約14%といわれており、約7人に1人。つまり学校で1クラスに生徒が35人いる場合、そのうちの約5人は該当者だという計算になります。

しかし、境界知能のことはまだ一般的にあまり知られていない上、困難さが目に見えにくいので、必要な支援を受けられないまま苦しんでいる人も多いのが現状です。

境界知能の人が直面する困りごととしてよく言われるのは、認知機能の低さ、コミュニケーションの困難さなどです。

個人差はありますが、実生活では先生や上司の言っていることが理解できない、仕事がなかなか覚えられない、お金の管理や事務手続きが苦手、ハサミがうまく使えない、スポーツでとんちんかんな動きになってしまうなどといった形であらわれます。

お分かり頂けますでしょうか?

周囲から言われていることが理解できずに困っている方が、約7人に1人という割合でおられるんです。

境界知能

私は、とある事をきっかけに、「境界知能」についてたくさん調べました。

ですが、専門家ではないので、もちろん理解の足らない部分はまだまだあります。

この記事を書くにあたり、精一杯、私個人の見解にならぬよう努めますが、それでもまかないきれない部分は出てきますので、詳しくはこちらなどお読み頂けたらと思います。

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境界知能にある方々は、上記のように、日常生活や仕事において困難を感じていらっしゃいます。

例えば、日常生活では金銭管理や、役所の手続き、携帯電話などの契約の場面などで難しさを感じたり、コミュニケーションや対人関係でのお困りごとがある方もいます。

仕事においては、口頭指示では理解が難しい、多くの人から指示を受けると混乱してしまう、漢字が多いマニュアルでは意味が理解しづらい、業務を覚えるのに時間がかかるといった傾向があります。

ただし、その「困っていること」が周囲にはなかなか理解されません。

多くの境界知能にある方々は、そうした日常生活や仕事での困りごとが続くことと、周囲の理解が得られないこと(孤独感)などで、社会的な不適応を起こし適応障害、うつなどの精神疾患を発症するリスクが高いと言われています

あの時の、境界知能という言葉さえ知らなかった時の私たちもそうでした。

彼女は一体、何が分かっていないのか、何で出来ないのか…そもそも何でそんな事になるのかまったく何も理解する事が出来なかったんです。

補足の部分を理解できていないから肝心の「危ないからダメ」が伝わらない

たしか最初は「友達にいたちのおうちに相談した方が良いと言われて電話しています」というようなお話だったと思います。

「相談ということは、何かお困りごとですか?」というこちらの質問に対して、お店にいる子が可哀想だったから買ってきたこと、里親募集されている可哀想な子をお迎えしてあげたこと、などなどで今は十数匹飼っていること、や自身の家族構成やお友達のことをずっとお話しされていて、結局、何を相談するために電話をしてきているのか、その日はとうとう最後まで分からなかった事を覚えています。

このお話だけで、「え?」ってなられている方は多いと思いますが、残念ながら、私たち保護活動者は単なる一般人ですから❝そこ❞に口を出す権利はありません。

し、それについてを話し出すと今日のお話からは逸れるので「可哀想な子のお迎え」については私の考えはこちらの記事をお読み頂けたらと思います。

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あの時、少しでも私たちに境界知能についての知識があれば、なぜ自分がいたちのおうちに相談した方が良いと言われているのかは分かっていないけど何かには困っている状況なんだろうなという事に気付けていれば、あんな事にはならなかったのにって…だから、たくさん調べたって先ほどの話に繋がるのですが。

そういう事があったことも忘れかけていた(そういう連絡はたくさんくるので)ある時、そのお友達の方から連絡がありました。

自身はフェレットを飼っていないけど、あまりにも「おかしな飼い方」をしている彼女を見かねて、いたちのおうちを調べて「ここへ相談した方が良い」と彼女に言ったあのお友達です。

「あの子がフェレットをバンバン死なせちゃってるんです。」

「また死んじゃった」って言いながらフェレットをぎゅうぎゅうに詰め込むのをやめない飼い主さんの話

どうして死んじゃうのかまでは分からないけど、例えば、具合が悪い子を病院へ連れていくのに他のフェレット達も全員、小さなキャリーにぎゅうぎゅうに押し込んで連れて行ったり、死んじゃった話はするけどその後どうしたのかを聞いても答えないとか、「とにかくおかしいんです」って。

フェレットを飼っていない自分が言っても「あなたはフェレットの事を知らないんだから」と言って聞いてくれない、だから、いたちのおうちから言って欲しい、フェレット達が可哀想だとの事でした。

急いで彼女に連絡をしましたが、そのまま「お友達から電話をもらって連絡しています」と伝えた私にその場で心を閉じてしまい、本当のことは何も話してくれませんでした。

そういう状態では、私は何もできないどころかむしろ邪魔になるだけですから、他の方に、彼女の話を聞いてあげて欲しい必要ならレスキューしてあげて欲しい、裏方は全部こちらでするからと、お願いした案件なのでここからは「だったそうです」というお話にはなりますが、その時にいたフェレット達は全員もう虹の橋のたもとにいます。(それくらい昔の話だという意味でだけ受け取って下さい)

後から聞いた話では、私に怒られるとか取り上げられるとか、なぜかそんな風に思い込んでいたようで、「いたちのおうちには知られたくない」と言っていたそうです。

境界知能の方は小さい頃から、周りの理解不足によって自分ではその理由が分からないままただ怒られてるとか、なぜか笑われてバカにされるなどというような経験をされてこられた方が多いそうで、何かちょっとでも気まずいこと(後ろめたいこと)があったら「また怒られるんじゃないか」とか「またバカにされるんじゃないか」みたいな嫌な記憶がよみがえって、とっさにごまかすようなその場しのぎの嘘をついてしまったりがあるそうです。

彼女が私に怒られると思い込んでいたのも、すぐ分かるような明らかな嘘の話しをしたのも、全部、境界知能の方の特徴として書かれていました。

彼女が生きづらさを抱えている人だと最初に気付けてあげられていたら、そんな風に思い詰めさせてしまう事も、嘘をつかせてしまうことも無かったのに…本当に申し訳ない気持ちです。

「病院に行ってるんじゃなくてどこかへ遊びに行ってるだけっぽいです」

「何回言っても、キャリーに全匹詰め込むのをやめさせられません」

「移動は自転車が多く、キャリーは前のカゴに乗せてるだけっぽいのですが、その時に何度か落とした事があると言ってました。多分その落下事故で亡くなった子が数匹いるっぽいです。」

等々と報告をもらう中で、「また死なせちゃったっぽいです」というお話の時、彼女と直接接触している担当の方から「この方は軽度の知的障害か何かがあるのでしょうか?精神疾患で薬を服用しているとは聞いていますが話の通じなさが何かこう…」とありました。

これ以上はとてもセンシティブな内容になるので、これより深いお話は素人の私はもう控えますが、冒頭のお話とこの時の彼女には共通している点がたくさんありました。

話が通じないんじゃない、理解できてない部分があるだけ

「それはダメなことですよ」を伝える時、少しでも相手を不快な気持ちにさせないよう、怒らせてトラブルにならないよう、傷付けてしまうことがないよう、等々の配慮から、最初は寄り添うような形でそのような声のかけ方をする方が多いのではないでしょうか。

大人の気遣いとしてそれが一般的かと思います。

が、境界知能の方にはそれこそが「理解できない」の原因です。

結果として肝心なことが伝わっていないのも、ご本人を混乱させてしまっているのも、こちら側の声のかけ方がそうさせてしまっているんです。

鍵垢になってしまってもう見えなくなっているので、あくまでも『例えば』のお話しとさせて頂きますが

そんな人ごみでこの暑さの中を連れ出していたら猫ちゃんのストレスになっちゃいませんか?開口呼吸になってるように見えますが、熱中症になっちゃってませんか?

これは、

そんな人混みに、この暑さの中、猫を連れ出したらストレス(体にかかる負担と心の負担の両方です)になるからダメですよ。開口呼吸という熱中症の症状が出てますよ

という意味でかけられた言葉であるはずなのですが、一般的な社会での認識や諸々の理解が苦手な境界知能の方には、「猫のストレスになっていないか」と「熱中症になっていないかを聞かれている」のだとしか受け取れていません。

だから、「うちのネコは人が好きなので大丈夫です」とか、「猫はもともと砂漠に暮らす生き物で暑さには強いから大丈夫なんですよ」みたいな一見するとこちらをおちょくっているかのような頓珍漢すぎる返信になってしまうのです。

ですがこれは、大真面目に答えていて、こうなのです。

一事が万事そういうやり取りになるので、しびれを切らして「ふざけるな!そういう話をしてるんじゃないんだよ!」と言いたくなる気持ちももちろん分かるのですが、それが境界知能の方々の「生きづらさ」だと、皆さんも知っておいて下さい。

可愛がり方を間違っているだけで、その子を大切に思っている気持ちは間違いないんです

フェレットをぎゅうぎゅうに詰め込んでしまう彼女は「うちの子達は仲良しだからいつでも皆で一緒にいさせてあげたい。だからそうしてるんだ。」と言っていたそうです。

でも詰め込みすぎは可哀想だし事故に繋がる危険性があるからせめて2~3匹ずつにしましょうねと手を変え品を変えいくつもの代替案を出したけど「どうやっても説得できません」と担当者さんは言っていました。

この「2~3匹ずつ」とか「いくつもの代替案」が伝わらなかった原因だと思われます。

境界知能の方は抽象的で複雑な情報を処理することが苦手です。

「このキャリーには2匹しかいれてはいけない」「たくさんいれたら死ぬことがある」と彼女が理解しやすい表現で伝えるべきだったし、まず何よりも先に、根本にある「皆をいつも一緒にいさせてあげたい」が「ムリ/ダメなこと」だと理解してもらう事から始めなければいけなかったんです。

今ここをお読み頂いているあなたもきっと、「は?そんな事から説明しないと分からない人なんている?!」って思っているのではないかと思うのですが、「いる」んです。

もちろん、程度の差はありますが、「7人に1人」という割合で、あなたの周りにも、周囲に気付いてもらえずに一人で困ってらっしゃる方が「いる」って事を知っておいて下さい。

ただ、飼っているペットの生物としての特性を考えずにその生物にあった飼い方ができない、自分のやりたいよう好きなようにしかお世話ができないというのは、境界知能ではない方々の中にも時々(いや結構)見かけるので、境界知能の方の特徴というよりは、もともとの個人の特性によるところが強いんじゃないかなと私は考えています。

だから、分かっていないだけの方には❝ちゃんと❞教えてあげて欲しいんです。

境界知能の方の特性を理解して正しい声のかけ方を

境界知能の方は「突然のこと」に対応できずにパニックになってしまいやすいのも特徴です。

認知機能が弱いので、変化した状況を理解・タイムリーに判断して実行する過程を踏むのが難しく、そうなるともう、パニックになったり、他者からのアドバイスを聞き入れず一定の方法に固執してしまったりしてしまいます。

そして、そのことを「隠さなきゃ」という思いから、嘘をついたり、そのコミュニティから抜けたりして、余計に孤立して、にっちもさっちもいかない状況になってしまうのです。

そうならないために、その時、あなたは、どうお声かけをしますか?

って、ここまで書いておいて何なんですが、私には「これが正解です」が分かりません。

もちろん、私はこうします、いたちのおうちではこうしています、というものはありますが、それは皆さんに「そうして下さい」とするものではないし、こういう事はやはり、個人と個人との繋がりの中で「どうしていく事が最善か」は違ってくると思うから…

誤解だけは絶対にして欲しくないので最後に改めてきちんとお伝えしておきたいのは、今日の記事はあくまでも「知っておいて下さい」というだけのものです。

参考としてお話にさせて頂いた方たちのことをどうこうというお話ではありませんし、個人の特定なども絶対におやめください。

ペットに対して間違ったことをしている人を見かけた時、間違ってるよと伝えた時、それがなぜだかどうしても伝わらない時、その時に思い出して欲しいお話として書いています。

「言っても分からない人だから」と諦めずに、その方にとっても、ペットちゃんにとっても、安全で幸せな未来へ繋げてあげられるのは、そこで二人が困っていることに最初に気が付いたあなたなのですからね。

めちゃくちゃ長くなってしまいましたが…

いたちのおうちは、全てのペットたちの安全と幸せな生活を願っています。

健やかなニョロニョロ生活を☆彡

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