私がまだ小学生だった1980年代のいつの頃だったかに「犬捨て山」という言葉をニュースで聞きました。
高校生だった1990年代には「捨てられたシベリアンハスキー達が野犬化した山がある」と単なる噂だったのか今となっては分からないけどそんな話がありました。
2000年代に入ったら「野犬化したチワワが~、トイプードルが~」って…
それまで、「知り合いの家で生まれた子犬をもらう」が主流だったのが、血統書付きのブランド犬ブームに切り替わったのが1980年代。
当時の資料を探してみたら、犬捨て山と呼ばれた一つの現場には雑種の子ばかりが写っています。
※その現場ではピーク時には400頭を超えていたワンちゃん達は『2018年6月を持ちまして、現場から全ての犬たちがいなくなりました。』と報告されています。
http://www.animalweb.jp/bokuiki/tatou_hp/maruko.html
www.animalweb.jp
1990年代には某漫画の影響でシベリアンハスキーが空前の大ブームになり、2000年代には某CMの影響でチワワが…
まぁ、どう考えても日本の自然界に適した体を持っていないシベリアンハスキーやチワワがそのまま野犬化してどうのこうのという話は考えにくく、それでもそんなうわさ話になるという事はどこかで大量遺棄があったとかそういった話に尾びれ背びれが付いての事だったのではないかなと思います。
捨てられた小型犬220匹/問われるペット社会 | 全国ニュース | 四国新聞社
小型犬の大量遺棄が後を絶たない。
www.shikoku-np.co.jp
今日はそんな「(怒りを込めてすっごく嫌味な言い方をあえてします)明らかに捨てられたと分かりやすい大量遺棄」のお話ではなく、一匹単位でポツリといるフェレットについてのお話をさせて頂きます。
観光地やリゾート施設で保護するフェレットについて
つい先日また一ヶ所そのようなご縁を新しく頂き、まだ7ヶ所ではありますが、2022年9月現在、「フェレットかもしれない生き物を保護したら、いたちのおうちへ連絡を下さい」と行楽地/リゾート施設と言われる場所でそのような活動をされている団体さんや個人さんと繋がりを持たせて頂けるようになりました。
現地の警察署とのそういう事はそれぞれの皆さまにお願いをして、「生体の保護」はこちらへ任せて頂くという形です。
※施設名や場所を公開して、これ以上、捨てに行く人が増えるような事があっては本末転倒ですので土地も何も一切明かしません。
日本全国のどこにも動物の遺棄がしやすい場所なんてあってはいけない事ですからね。
私が見てきた観光地やリゾート施設のリアルな話
自然豊かな場所には当然ながら野生動物たちがいます。
肉食動物のクマはもちろん、タヌキ、カラス、猿、ワシ、猪、等々…雑食性の生き物がたくさんいます。
ペットとして生まれてきたフェレットが放り出されて、何日も生きていける環境ではとてもじゃないけどありません。
だからだとは思いますが、生きて保護される子には「さっきまで人といました」みたいな子が割といたりもします。
例え「数日前から見かけていた」という外での目撃情報があったとしても、その数日間はしっかり「猫のご飯を食べに来ていた」とか「ゴミの集積場をチョロチョロしてた」とかって、「人の近く」にいた事が分かる子達で、ご縁を頂いた7ヶ所の皆さまとは「妙に人懐っこいから野生の子じゃないと思って調べたらフェレットだったんで」って保護してもらえた子とか、
(フェレットは野生にいない事を知っている方だったのでしょう)「観光客の方がフェレット逃げてますよって捕獲して届けてくれたんだけど扱いが分からないからおたくに電話しています」とか、とか、とか、なんですけど、「フェレットの保護にご協力頂きありがとうございました。」って言うと、皆さんが必ず「他の野生動物に襲われてなくて良かったです」っておっしゃいます。
それくらい過酷な場所にわざわざ置いてきたら
保護なんか間に合わないよ!死んじゃうよ!
※あくまでも「みたいな」というだけでマダニが付いている事が夏場はとても多いです。
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今、「脱走させちゃったペットの可能性は?」って思ったあなたに、これからとても厳しい現実をお話しします。
観光地の条例
まず、「法律」とは国会によって制定される法のことをいい、「 条例」は地方自治体によって制定される法のことをいいます。
ペットに関する法律は日本全国で共通ですし、ペットに関する条例も日本全国でほぼ共通です。
そこに、自然豊かな観光地では「野生動植物との共生に関する条例」が加わります。
※東京にも野生動物に対する条例はありますが、観光地などはその比ではなく細かく厳しく制定されています。
また、畜産業が盛んな地域ではそれに該当する条例も加わります。
「保護」についてのお話をさせて頂く時、東京と違うのはもちろん、「前のあの場所とも違うな」ってどちらの方とお話をさせて頂くにしてもいつもそう感じます。
それに関しては、東京の中でだって警察署によって色々と違うから、別に大した問題ではありません。
その土地土地の皆様に合わせて、こちらはとにかく「この子の事は任せてください」と命のお世話を買って出るだけです。
ただ、「ペットを脱走させる事」についての考え方や重さの違いはとても勉強になるなって思います。
観光地のリアル
例えば観光客の方が連れてきたペットを脱走させてしまったとします。
まずは探しますよね?
ホテルの客室からならホテルの方に当然言うし、お散歩させている時なら、そこらじゅうの人やお店にそれを伝えて探し回りますよね?
だから、そこにいる皆が「その子がいなくなった」事を知ってるんです。
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誰も探してない、探されているなんて話をそこにいる誰も聞いてない、野生じゃない子がそこにいたら皆さん「また置いていかれた子か」って思うんですって。
だって、今までずっとそうやって日本中から皆が捨てに来てたから。
そういう子達を何年も何年も保護して見守ってきて下さってきた現場の方々の心中はいかほどかと、もう…胸が詰ります。
「迷子にされちゃった子より、飼い主さんに置き去りにされていった子達の方が圧倒的に多いのが観光地の現実なんですよ」って聞くたんびに何て返したら良いのか…何年経っても分かりません。
いたちのおうちの保護下にある観光地で保護したフェレット
そうやって、フェレットを捕獲保護して下さった方とその管轄の警察署とのお約束にいたちのおうちは従います。
お預かりにあたり、警察署と直接のやり取りが必要な時にはもちろんそのようにします。
これまでには「飼い主さんが出てくる事は多分ないと思うからどうぞそちらのやり方で幸せにしてあげて下さい」って言われた事もあります。
お巡りさんがそんな風に言うのは、それまでずっとその地域で保護された子を迎えに来てくれた飼い主さんがいなかったからで、その子は山の中腹にある食堂の駐車場にキャリーごと置いていかれた子でした。
二晩ほどその食堂の裏で保護して下さっていたそうですが、仮にうっかり忘れてきたんだとして二晩も迎えに来てくれない飼い主なんていませんから、私も(そうでしょうね…)とは思いましたが、それでも「3ヶ月間はいたちのおうちで大切にお預かりしています。飼い主さんから問い合わせがあったらここへ連絡を下さいと伝えて下さい」って警察署にも捕獲主さんにも言いました。
いたちのおうちは保護活動者ですから。
けど、やっぱり、その子を含めて、観光地で保護した子の中から元のお家に帰れた子は一人もいません。
…今日のお話に「まとめ」とかそういうのは無いです。
ただ、「現実」を聞いて頂きたかっただけですし、ペットを捨てるな!なんてそんな当たり前のことを今更…ですし、ね?
あ、もちろんお分かり頂けているとは思いますが、これが全ての観光地のお話しって事ではありませんし、今は法律が変わって色々と良くなっていく途中です。
良くなっていく途中だと信じて、「保護される子が出ないペット社会にするには」を皆さんそれぞれに考えて頂くきっかけにしてもらえたらって思います。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡