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ペットと暮らす

所有権の壁とは?虐待や遺棄に見えても「うちのフェレットです」と言われたら保護活動者は返すしかない

前回のお話し、「まとめは皆さんにお任せします」と〆たからだと思いますが、今日までに結構な反響を頂いています。

多い順に

  1. そんな(不適切な)飼い主からはさっさと生体を取り上げるべきです(それが保護活動者の仕事でしょう?)
  2. あなたの言い方(伝え方)が悪いのでは?(自分ならこう言うという例をあげて下さってる方もおられました)
  3. 法律がなってない!!
  4. 同じ目に合わせてやりたい!(決して過激派のそれという事ではなく、どなたも皆さん動物たちを思い、悔しい!可哀想だ!という各々の気持ちを伝えてきて下さっているだけです)
  5. などなど

それらの中には一部、私がまろやかな表現に留めたせいできちんと伝えられていないのかなと思うご意見があったり、また、「フェレット」にあまり詳しくないのかなと思う保護(愛護)の方からも何件か頂いていたりして…

なので、今回はもう少し掘り下げてお話しさせて頂こうと思います。

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ペットの所有権とは?所有権の壁とは?

これまでいたちのおうちをお読み頂いてきている皆さんは既にご存じかと思いますが、お初の方がおられるかもなのでおさらいとして念のため…

日本の法律では動物たちは「物」という扱いで、ペットは飼い主の「所有物」です。

「物」の所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有します(民法206条)。

民法206条
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
六法全書
法律

これが今日のお話「所有権」の説明です。

その「所有権」については法律で制限をすることができますが(財産権:憲法29条)、たとえ、虐待ともいえる状況下にある動物についてでも、飼い主による飼育を一時的に停止したり、飼い主から所有権を強制的に取得する法律はありません(2022年7月現在)。

憲法29条
1 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

※財産権についてのお話はややこしく書き始めたら終わらないので、もっと詳細をしりたい方は恐れ入りますがご自身でお調べ下さい。

六法全書
法律

要するに、新たな立法がない限り、「飼い主からペットを引き離す」ことは簡単にはできないという事です。

これが我々の言う「所有権の壁」、そう、冒頭でお伝えした、一番多かったご意見の

  1. そんな(不適切な)飼い主からはさっさと生体を取り上げるべきです(それが保護活動者の仕事でしょう?)

が簡単には出来ないこと、お分かり頂けますでしょうか?

②に関しては「今後の参考にさせて頂きます」で留めさせて頂くとして、③の「法律」について…

虐待、遺棄…「法律上」では

こちらは「明治以来120年の民法改正を目指す」とご尽力されている参議院議員の先生のツイートです。

私はもう長いこと保護活動に携わっているので、「こういう時にはこういう風にごにょごにょ」みたいな裏技的なものをそれなりには持っていますが、それでもやっぱり、根本「法律を変えてくれなきゃ、法律で定めてくれなきゃ、どうにもならん」みたな場面は多々あります。

例えばこの串田先生のお話にある「重大な虐待」、これは一体、何がそれにあたるのかお分かりになる方おられますか?いませんよね、だって「重大かそうじゃないか」の線引きなんて人によって違う…っていうより、もっと言ってしまえば、「虐待の定義」が無いんだもの、分かるわけないですよね。

※誤解を招く前にお伝えしておきますが、私はくしだ先生を応援しています。

皆さんの中にもある、「法律を変えなきゃ」「動物たちの為の法改正を」という気持ちは、少しずつでも確実に形になってきています。

信じて、願って、行動に移していきましょうね!!

④については法改正どころか、ハンムラビ法典適用案件なので、心にグッとしまっておきましょう。

(私も気持ちは同じだという事だけはお伝えしてきます)

所有権の壁~実例~

フェレットの目撃情報を受けて捕獲にむかい、無事に保護して警察署にそのまま届出を出しに行ったら、その場でお巡りさんが慣れた様子でどこかへ電話をかけました。

お話しを伺うと、数年前から「何度も届くからお家が分かってる子」なのだと。

しばらくの後に飼い主だと名乗る方がやってきて「あー、またお散歩してたのぉ」とその子を抱っこしながら言いました。ニコニコと笑っていました。

「網戸にはしないであげて下さい」

「うちの子は頭が良いし身体能力が高いから仕方ないのよ」

「しっかり施錠してある窓をフェレットが開けることは無いです」

「私はクーラーが苦手だから夜は窓を開けるしかないの。うちは風通しが良いから(略)」

「では、窓を開けている時は必ずケージに入れておいてあげるなどの対策をしないと、これまではたまたま帰ってこられていたというだけで、私たちは交通事故に遭って亡くなった子の姿を幾度も見てきているから言ってるんです」

「でもいつもこうして帰ってくるし、ご近所さんもみんな知ってるから大丈夫よ」

ケージの用意すらなく何度も脱走させる行為は私たちにとっては「不適切飼養者のやる事=虐待」です。

外へ出たら死んでしまう可能性が高い事が分かっている動物を飼っているのにも関わらず、何も対策してあげないのは「死んでも良いと思ってるからやってる」って思うけど、そのまま言ったら「失礼ね!!」って怒らせてしまうだけで、何も解決に至れないのは経験則から知っています。

根気よく、手を変え品を変え表現を変えアプローチを変え、分かってもらえるまで説得し続けることしか私たちには出来ません。

~というわけなので、脱走の度にお話しをさせてもらいに来たいです、他の方からの届出だった場合でも私に連絡をもらえませんか?と保護活動者として署員の方にお願いをしてその時は帰りましたが、ある時、警察署でお会いした捕獲主さん(警察署に届け出て下さった方)に「保護活動者さんなんですよね?」って聞かれてから、

「何で返さなきゃいけないんですか?私これで3回目なんですけど、大通りに出ちゃったら死んじゃうじゃないですか。私が警察に届けなければ少なくともこの子が交通事故で死んじゃう可能性は0になるんだし、心配すぎて、出来たらそのお家には戻したくないんですけど」って言われました。

気持ちは分かるけど「そうですよね」とは言えません。

私は保護活動者だから、返さなきゃいけないのは法律で決まっている事なのだと知ってる、どころか、むしろ知らない人にはそれを教えて回らなきゃいけない立場の人間だから…

時が経ったある時、その子が「死んでる」とその時の捕獲主さんから連絡がありました。

車に何度もひかれた状態で今目の前にいます、どうしたら良いですか?って震えた涙声はすぐにしゃくり上げてのそれに変わって、「だから言ったじゃないですか…なんで返したんだろう、返さなきゃ良かった。私が返さなければこの子は死ななかったのに、あなたが悪いわけじゃないのは分かってますけど、あなたの話なんか聞かなきゃ良かった…結局この子死んじゃって…保護活動って何なんですかね?」って…

たまらなかったです、やるせなかったです。

悲しいですよ、悔しいですよ…

それでも私たちは、何度も脱走させる飼い主さんにでも、何度でも返さなければいけません。

所有権の壁は厚く高いのです…

所有権ガン無視は愛誤のやること

もうずいぶん昔の話になりますが、知人のお婆さんが半外飼いで猫を飼っていました。

ある時、動物愛護を名乗る人がやってきて「猫風邪をひいているようだから自分たちが病院へ連れていってあげます」と、その猫を連れて行ったきり返してもらえなかったそうです。

すったもんだあった経緯も聞きましたが、結局…

猫は爪を切ってあげなきゃいけないなんて事も知らない世代です、ちゃんと病院へは連れていってあげていたそうですが、お薬を上手に飲ませてあげられないからいつまでもちゃんと治らないままだし、外に出してるし、って事で「不適切飼養者」「年寄りに老猫のお世話は出来ない」と思われたのでしょう…

だからと言って、「猫のために」と所有権を無視して猫を奪い去っていったのは愛護じゃなくて愛誤、ただの泥棒です。

って、こんな話しをしたら「じゃあ、動物のためには愛誤になるしかないのか?」って絶望しかなくなるので、最後は少し前向きなお話しで〆させて頂こうと思います。

法律や条例、多くの意識が少しずつだけど確実に変わってきてる!

さっきも書いたように、法律上、動物は「物」です。

私たちにとっては明らかに虐待と思えるような飼い方をしていても、所有者に「それはうちの子です」と言われたら返さなければいけません。

拾った財布やスマホを警察に届けなければ、持ち主さんに返さなければ、「いけない」のと同じです。

動物自身の福祉を保護するような規定(虐待の定義)が明確にされていないから、たとえば、フェレットが外で飼われているから、ケージ飼いしていないから、何度も脱走させるから、適切な医療にかけてあげていないから、等々、「フェレットが死んじゃう」ってこちらの言い分で勝手に連れ去ったら、それは泥棒。

外で保護した子の状況を見て「捨てられたんだ可哀想に」って、飼い主に繋げる努力をせず勝手に自分の子にしてしまうのはネコババ。

「フェレットのために」という自分の感情だけで法律を無視したり、犯罪をおかすのは愛誤。

で、こちらが、上載した串田先生のツイート(リツイート)にある「めぐちゃん」のお話しなのですが、

2013年6月。東京・吉祥寺の公園で、一頭のゴールデンレトリバーが口輪をはめられ、柵につながれていた。犬を保護した主婦・Aさんは、警察や保健所などに届出をした上で飼い主を探したが見つからず、その子を「めぐ」ちゃんと名付けて家族に迎える。

が、めぐちゃんの「拾得物」としての期限を迎える10日前、飼い主の女性が現れ、めぐちゃんの返還を要求。めぐちゃんが2度も公園に遺棄されていたことや、それまで3ヵ月近く飼い主がめぐちゃんを放置していたことなどから、Aさんはめぐちゃんの返還を拒否し、裁判で争うことになった。

結果は、保護主であるAさんの敗訴。

出典:置き去り犬めぐちゃん「強制執行」~「動物はモノ」という悲しい現実 

愛誤にならないように正しい気持ちで正式な方法で意見を通そうとしたら敗訴。

現行法で「所有権」を活動者がどうのこうのというのは土台から無理なのです。

所有権が一番強いのだからそもそもそこを!の話

それでも、いたちのおうちは、愛誤者にならず、腐らず、不貞腐れず、今日までまっとうに保護活動を続けてきました。

その中で、確実に少しずつ色々な事がそちらへ向かって動きだしてきているのをここへきて肌で実感しています。

それどころか、つい先日「お迎えしてもらった子が遺棄されないよう、脱走対策をちゃんとしてもらえるように、するにはどのようにしたら良いのか、保護の観点からのお話しを聞かせて欲しい」と声を掛けてもらえる機会に恵まれました。

そうです、「最初に所有権が発生する時点」できちんとしてさえもらえたら、その後の「所有権の壁」なんて問題がそもそも発生しなくなるのですよ。

保護を必要とするフェレットがでなくなるペット社会が見えてきた!

正しいと思った事をきちんと真っ直ぐに続けてきて良かった。

まだ第一歩目の端っこが少し見えたような気がしているだけなのかもだけど、きっと変わる。

「動物の」なんてそんな大それたことは言わないけど、「フェレットの」だけでも、皆でもっともっとこれから、ここから目指していきましょうね!!

健やかなニョロニョロ生活を☆彡

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