今日のお話は、先日、虹の橋を渡った里子ちゃんのお話しです。
その子については、ママさんから「差しさわりがなければ教えて頂きたいのですが、あの子はうちに来る前はどんな生活をしていたのでしょうか」と聞かれるまで、私は「ずっと遠い将来的にいつかは書こうと思うけど」カテゴリーにいれていました。
横のつながり的なあれこれで当初は緘口令を敷かれていたという事もありますが、それ以上に、自分の語彙力ではどうしても誤解を招いて変な風になってしまう気がして…
でもせっかくだから、これは皆さんにも知っておいて欲しい『現実にあること』としてお話させて頂こうと思います。
今日の主人公「ララちゃん」は、ママさんからお借りした写真通り、美しくて気高い、とても可愛らしい女の子のフェレットです。
とても素敵なお家に家族としてお迎えしてもらい、3年と3ヶ月、これ以上にないくらい幸せな鼬生をまっとうしたその子はなぜ、いたちのおうちに来る事になったのか、レスキューに至るまでのお話しです。
不適切飼養者は悪人なのか?フェレットの飼い方を知らなくても愛情を持って可愛がっていたのは事実
引き受け要請があったのはとんでもなく暑い時期、真夏のど真ん中な時期でした。
「犬だけかと思ったら、フェレット、何々、何々(他にもたくさんいたけどもう忘れてしまいました)を家族に内緒で押入れの中で飼育されてまして…全頭一斉の引き出しになるので〇日にご協力をお願いします」
「フェレットは今どこにいるんですか?押入れからは出してもらえてるんですよね?」
「分からないです。引き上げ当日までは本人の好きにさせてあげたいとご家族からの依頼なので」
「いやいや、こんな暑い時期に押し入れなんかで飼われてたらフェレットは死んじゃいます、フェレットだけでも今すぐに引き出せるようにしてもらえませんか?」
翌日、仕切り役の方から「来る前に連絡くれればいつでも良いとの事なんで」と、ご本人の連絡先を教えてもらったので、私は急いでその日のうちに引き出しに行きました。
所有権放棄の書類は一斉引き出しの日に仕切りがまとめて取り交わす事になっていましたが、一応、念のためにボイスレコーダー持参で。
「適正飼養」という言葉すら知らない世代
外の方が涼しくて話しやすいからと、その子をブラブラ抱えて玄関先まで出てきた飼い主さんは昭和10年(だったか15年だったか…もう忘れてしまいました)生まれだとおっしゃっていました。
「ワクチン接種証明書や購入時にもらった書類など、この子に関する書類は何かありますか?」
「ワクチンが何?書類ってなんの?」
「この子に関するものなら何でも良いんですけど…」
バッサバサの毛並みに伸びきった爪…多分、何も無いだろうなと思ったので質問を変えました。
「病院に連れて行かれた事はありますか?」
「あるよ、犬の病院の時には必ず他の子も誰か一匹は連れて行ってるから」
「この子が最後に病院へ行ったのはいつですか?」
「インフルエンの時期だから今年の2月だね」
「その時は何をしましたか?病院で何か言われましたか?」
「あ、そうそう、うちには犬がいるって先生も知ってるから予防接種の注射が必要だって言って打ってもらったけ。爪もその時に切ってもらってある。フェレットはトリミングに連れてかなくて良いから楽だね。」等々
「この子は何歳ですか?」
「2歳」
スッと答えが返ってくる時と、質問の内容がいまいち通らない時とのギャップは多分、ご高齢者特有のものだと思います。
動物が好きなのは分かった…間違ってるけど
「この子、可愛いでしょう?店で一番毛並みの上等な子を買ったんだから」って、頬にその子をスリスリしながら言いました。
(2歳にしては毛並み悪すぎるけど…)
夕方でも30℃を超えてる時期にフェレットを連れたまま長く立ち話しをするつもりは無かったので…以下ボイレコよりそのまま文字起こしになります。
「この子をお迎えして下さる里親さんに何かお伝えする事はありますか?」
「は?お宅さんが飼うんじゃないの?この子どっかやっちゃうの?」
「私は保護活動者ですので、きちんとした里親さんにお繋ぎして、そちらのお家で終生大切に育てて頂く事になるんです。」
「えー、もったいない。この子高かったんだよ?お宅が飼えば良いのに。」
「いえ、私は…」
「そうだねぇ、知らない人に伝えたい事とか言われても特にないけど、あっ!一つだけ!!もしさ、子供を産ませるんだったら、相手もできるだけ上等な毛並みの男を選んでやって欲しいって伝えてくれる?」
「えっ?」
「この子はせっかくこんなに器量よしなんだからどうせなら釣り合う極上のハンサムを選んでやって欲しいって親なら誰でもそう思うもんでしょう?」
「えっと…フェレットはみんな不妊手術済みだって購入された時にショップで説明受けてないですか?」
その後、思いつく限りの語彙を使って”フェレットについて”の説明を延々としているのですが、
自分は若いころからたくさんの動物を飼ってきた。
全員、器量よしの女の子。
避妊手術を受けさせた事はどの動物にも一度もない。
見てくれの良いオスがいたらお金を払って種付けしてもらって(以下略
だから、この子も妊娠できる。
「上玉のベイビーが生まれるよ」、「別に赤ちゃんが生まれたら一匹よこせなんて言ってやしないんだから良いじゃないの。せめて写真だけでも見せてくれないかってお願いしてるだけなんだからさ」って、いくら説明しても理解してもらえず、どうやってもそこへ行きつく流れになってて、我が事ながら相当困ってる様子が数分続いて
「蚊が入ってくるから玄関閉めろ!いつまでしゃべってんだ!」と、遠くからご主人(?)の声に「じゃ、よろしくね」って小声でささやくように言われたところでボイレコが終わっていました。
どうにもこうにも何一つ釈然としない引取りだった事は鮮明に覚えています。
可哀想な可愛がり方の犠牲になる動物たち
後から分かった事ですが、ララちゃんはその間ずっとドッグフードを食べていました。
爪切りや耳掃除といったお世話が必要である事、ケージから出して自由に遊ばせてあげる必要がある事、そういう事は「一切、知らなかった」と。
この2行だけ見たら、「とんでもない虐待」のはずなのですが、ララちゃんは人懐っこくてお利口さん、私たちの言葉も最初からある程度「分かってる」子でした。
それは、元飼い主さんがちゃんと愛情を持って毎日たくさん話しかけて可愛い可愛いってしてきてくれてた証拠なんです。
…って、皆さんはここまで読んでどう思いますか?
私はね、いくら愛情があっても、可愛いと思っていても、その生体の特徴に合わせた飼育環境できちんと飼ってあげていないのは「ダメな事」だと思うのですよ。
でもじゃあ、こういう場合って、どうしたら良いと思いますか?
フェレットに限らず室内で飼われているペットちゃん達のそういうのって外からでは分からないし、もし仮に分かったとしても部外者は何も出来ないんです。
「その子にとって適正な環境ではない」は私たち保護活動者からしたら虐待ですから、しっかり適正飼養の啓発に繋げたいのですが、頼まれてもいないのにそんな事を言ったって「大きなお世話」で終わってしまいます…
フェレットを炎天下で散歩させてたから…
先日、炎天下の元でフェレットが歩かされているのを見かけ、私は思わず駆け寄って抱き上げてしまいました。
焼けるような熱さになっているアスファルトの上を裸足で、こんな炎天下の元でお洋服(みたいになってるハーネス)まで着せられて…
私的には川で溺れている子供を見つけた時のあの「思わず飛び込んでいました」の心境だったのですけど、飼い主さんには「は?なに?あんた?変質者?人ん家のペット勝手に触って警察呼ぶから」って言われました。
もちろん「どうぞ」と言いましたけど、「ただ、この暑さの中でフェレットをお散歩させるのは~」と続けさせてもらっている途中で、「キッショ」って言って去って行ってしまわれました…
って、話がとっ散らかってまいりましたが、これが冒頭で申し上げました「どうしても誤解を招いて変な風になってしまう気がして…」を意識し過ぎている文章です。
さて、どうやってまとめようかな…
ムリ!
今日のお話のまとめは皆さんに丸投げします。
私たち保護活動者がいつもぶち当たる壁の一つを知って頂けるだけでも良いかなってさせて下さい。
おしまいに
ララちゃんと素敵なお家を繋いで下さった個人ボラさん
ララちゃんを家族としてお迎えして下さった里親さん
ありがとうございました。
ララちゃん、またね!!