保護活動なんてものを長くやっていると、本来であれば、とても素敵な表現であるはずの言葉なのに、「それは認められない」と変に意固地になるというか、「私がそれを言ってしまったら話が変わってくる(おかしくなる)、私はそれを言ったらダメなんだ」って瞬間的に否定的になってしまう言葉がいくつかあります。
それは本当に些細な一言で、でも、そういうご縁の形をいくつも見てきたから、「それは確かにある」と分かっているし、なんなら私自身だって、えるやさすけに対してそう思っているから、そう言います。
ただ、その言葉を口にする時、必ず「じゃあ、あの子たちはどうなる?」って浮かぶ子達がいるのも事実で、とても複雑です。
とあるそういう場所では決まり文句や挨拶みたいにして定形で使われる事もあるその言葉…
私には、とてもそんな風に口にしたりはできないけれど、今日は、心から「そう言わざるを得ないんだよなぁ…どう考えても、どう見ても」というお話しを聞いて下さい。
「最初からここに来る予定だったんだね」と言わざるを得ない里親さんとのご縁のお話し
梅雨入りはまだしていないのに、毎日がどんよりと、すっきりとしない天気がしばらく続いていた時期に警察署から1匹のフェレットをお預かりする事になりました。
一目見た瞬間に「随分と若い元気そうな子だなぁ」と思いました。
その数日前から警察署にいたというその子。
警察署の皆さんに大切に可愛がってもらっていたのでしょう、何かに怯える様子などは特になく、その場で抱っこさせてもらったら、すぐに、間違いなく若くて元気な子だと確信しました。
なんて言ったら良いのか分からないのですが、どんなに大切に可愛がってもらっていたとしても、外で保護されてそのまま警察署にいた子というのは、多少の脱水があったり、なんだか疲れていたりして抱っこしたらそれが分かるんです。
※私たちの言う「元気です」の基準はこれです。
私達が生体確保やその一発目の情報シェアで使う「元気です」の基準は
自力で立てる、歩ける、自力でお水が飲める、食べられる、危ない状態では無い、です
脱水の症状が見られても"とりあえず"元気です
健康診断の結果が出るまで分かりませんが"今は"元気です
ってそれが大前提にある「元気です」です— 滝川(いたちのおうちの中の人) (@MaikoTakigawa) August 10, 2020
が、その子は本当に「元気そのもの!」でした。
30℃を超える日はまだなかったあの時期とはいえ、2日も3日も外にいた子だったら、多分そうはいきません。
「もしかしてキミはお外に出てすぐに保護してもらえたラッキーちゃんなのかな?」
保護活動者は保護活動者として色々と考える
車で待機してくれていたボラさんも開口一番「すごい若くない??」って言いました。
誰の目にも明らかに若いこの子。
そのまま健康診断へ連れていってもらい、獣医さんにも「若くて元気な子だ」と、そのお墨付きを頂きました。
脱水もなく本当に元気、そして若い…と言ってもベビーでは無い。
「元気が有り余って、脱走しちゃった系かな?」
だとしたら、飼い主さんの所へすぐに帰れるねって、これは私たちの経験から推測できる話しです。
だから…というより、そうなる願掛けのような気持ちもあって、ジステンパーワクチンの接種は「ちょっと見合わせて様子をみよう」となりました。
が、一点だけ、どうしても気になる不安要素がありまして…
上記のような希望的観測をただ持ちたいだけの私たちの目に、この爪は、どうにも長すぎるのです。
被毛は全く汚れておらず、また、獣医さんで受けた健康診断の結果から考えても、外にいたのは多分、数時間です。
そこから警察署にいたのが数日として、それでは、この長さにはなりません。
数週間は伸ばし続けないと、ここまで鋭利には尖らないのです。
「ご飯だけはしっかりともらっていたけど、お世話はしてもらえなくなっちゃったかな?」
「コロナで家にいる時間が増えて、一緒にいる時間が増えた事で、恋人や家族、ペットが急に鬱陶しくなる人の話しは最近よく聞くもんね。」
「それで持て余して…」
嫌でも最悪な場合を想像をしてしまうのは、私たちが保護活動者だからです。
「とりあえず今は、余計な事は何も考えず、預かりさんとして、この子の安全と安心を第一に、心も体も健やかに暮らせるよう努めましょう!」
元気なのは良いこと!だけど「おとなしくて飼いやすい」って言われてたら、そりゃ持て余しちゃうかもだよねの典型的な子
環境が変わって数日間は「落ち着かない」から、その子の本性が出ない事はよくあります。
ずっとソワソワしてケージをガチャガチャガチャガチャやるのは、「なんか落ち着かないから」の場合も多いのですが、その時に、「ガチャガチャやったら開けてもらえる」と覚えさせないように私たちは、そこのシツケだけは厳しくします。
参考:『フェレットがケージをガチャガチャやる理由とその対策』
例にもれず、この子もケージガチャガチャはすごかったです。
1週間過ぎ、2週間が過ぎ、1ヶ月経ってもそれが治まる事はなく、この子は生粋のケージガッチャマンだという事が判明しました。
元気があって大変よろしい!
ケージガチャガチャ(寝落ちするまで永遠にやってる系の)ガッチャマンだった子
※新しいお家で今はもうとてつもなく幸せに元気に暮らしてるご報告頂いてます pic.twitter.com/dewebYwted
— 滝川(いたちのおうちの中の人) (@MaikoTakigawa) September 10, 2020
※このツイートはこの記事にこうして差し込みたくて投稿したものなので、日付はお気になさらずにお願いします。
当初の(脱走なら)すぐにお家に帰れるなという私たちの思いは、一ヶ月待っても「何の連絡も誰からもきていない」という現実で、「遺棄かもしれないな…」に変わっていました。
保管期間は残り2か月を切り、「飼い主さんをただ待つ」から「里親さんに繋げてあげる準備をそろそろ考えなきゃいけないね」の時期になりました。
キミの幸せはどこにあるんだろうね…
ご存じの方も多いかとは思いますが、私は個人的に「皆で仲良く」をこの子達に求めません。
基本的に「フェレットは一人っ子で育ててあげた方が良い!」とさえ思っています。
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ですが、里子に出すとなったら、私のそんな個人的な考えは関係無いです。
「対フェレット」がどうなのかを知っておいてあげなければ、要項が定まらず、そこから先へ進めないですからね。
という事で、まずはケージ越しの対面を…
って、ねぇ…
まぁ、もっとも、そういう考えの私の子供たちですから、そもそも「皆で仲良くする」を知らなくて仕方がないのですが、これはちょっと、どうにも「我が家に問題あり」すぎてお話しになりませんでした。
他の人(ボラさん)の考え
里親さん探しにおいて、これまでずっと100%の信頼を置き、その全てをお任せしているボラさんが言いました。
「この子は同じ年くらいで体力も何かも同じくらいで一緒に遊べるフェレットがいるお家が良いと思うんだよね。」
もちろんこれは、インスピレーションでみたいなそんな事からそう言ったのではありません。
そこへ至るまで、この子と触れ合って、お世話をしてくれたからこそのそれです。
要するに、私はいつも通りほとんど何もしていないという事なのですが、だから「そうなんですね!では、なるべくそういうお家に繋がるよう、よろしくお願いします」は即答でした。
ただ、体力差があまりない「同じ年くらい」で「一緒に遊べる」フェレットのいるお家から、そんなに都合よくご縁が簡単に見つかるだなんて、世の中そんなに甘くない事を私は知っています。
だから私はそれを「なるべく」と言ったわけで…とにかく全部、ボラさんにお任せしました。
ボラさん…いつも全部「この子のために」って、その全てを頼りきってしまって…本当にお世話になっています。
とんとん拍子…まるで最初からそうなる事が決まっていたかのように
先ほども言ったように、全面的に信頼してお任せしているボラさんですから、要所要所での報告だけで、お話しをどんどん進めてもらう形はいつも通りです。
ただいつもと違うのは、「この方でトライアルいこう思います」と里親希望者さんのお名前を聞いた時に「うへゃ?!」って変な声が出た事くらいで…
実はそのお名前には見覚えがあって、「ここのお家にいるフェレットは幸せだろうなぁ」と、そんな事を思う出来事がほんの少し前にあったばかりなのです。
もちろん、ボラさんは私がその方と面識(面識ってほどの事ではないけど)がある事を知りません。
また、その方はこの子がいたちのおうちの保護っ子である事は知らなかったはずです。
「こんな事ってある…?」
今から思えばきっともう、あの出来事があったあの時から、この子が幸せになるその運命の通りに「私が動かされて」いたんだろうなぁ…
って、思わざるを得ないくらいそこからはもうとんとん拍子で全てが最初の案でそのままスムーズに決まっていきました。
一度たりとも何も「あ、ちょっと待って」とか「やっぱりこうしましょう」がなく、本当に驚く速さでトントントントンって。
キミは本当は最初からここのお家に来るはずだったんだね
トライアル開始のその日、先住ちゃん達とのご対面を見て私とボラさんの目が点になりました。
それまでどのフェレットに会わせても「この子は体力がありすぎるんだね」って感想しか出ないような…初っ端からいきなり目が離せないような遊び方をするその子が、ちゃんとスンスンご挨拶から入って普通に遊んでいたのです。
「え…っ…と…」
何故だか私は泣きそうでした。
それがどういう感情でだったのかは分からないけど、「良かった」って勝手に一人で落ち着いた気持ちになっていました。
本当はダメなんですよ、だってまだ、トライアルが始まったばかりなのですから。
全然、気を抜いちゃダメなんです。
でも、私は「一仕事終えた」みたいな気持ちになっていました。
やっぱり私は、この子の運命の通りに動かされていたんだと思います。
当然の事ながら、トライアルは何事も何も問題なくすんなり終了。
本来であれば、里親様にうんちゃらかんちゃらという気持ちになるその日、元気いっぱいなこの子だから「最初からここのお家に来る予定だったんだけど、ちょっと行きすぎちゃって(てへっ)やっと来れた♪ここまで連れてきてくれてありがとう」って、そんな風に言われたような気がして…
改めてきちんとご報告させて頂くことではありますが、今のこの幸せな気持ちを抑えきれないから、チラッとチラ見せ
少し遠回りしただけで
キミは最初からここのお家の子だったんだよね、きっと…ご縁をありがとうございましたというより「やっと着いたね」がしっくりくる、そんな感じ
チラーリww pic.twitter.com/2TgYeoa0da
— 滝川(いたちのおうちの中の人) (@MaikoTakigawa) September 3, 2020
この動画!見て下さいね!!すっごく可愛いし、この子っぽいの!!お気に入り!な!の!!
ご支援頂いたお金のご報告
これまで当サイトでは、こういった記事はあまり書いてきませんでした。
いつもはもっとこう…サラっとしていたと思います。
が、ご支援頂いたお金のご報告がありますので、あえて記事にさせて頂きました。
交通費、病院代、その他の実費 28,596円(精算済み)
フードやペットシート等(他の保護っ子達の分とまとめて購入したもの)については、その時点での匹頭数で等分して現物を預かりさんにお渡ししており、「この子の分」としての計算はありません。
おしまいに
冒頭で言った「私がそれを言ったらダメなんだ」の言葉は、もうお分かりの通り「最初からこうなる運命」です。
外に放り出されたまんまで冷たくなって発見された子、お迎えが間に合わなかった子、こんなに小さな体なのにその一部が見つけてあげられなかった子、、、繋いであげる事、救いあげる事さえ出来なかったあの命たちは「こうなる運命」だったわけじゃ決してないから…
みんな最初からどう転んだって幸せにしかなっちゃいけない存在であるはずなのが「フェレット」です。
今日のこの子の事は、「あくまでも結果論」だと言われたら、それはそうかもしれません。
でも私はどうしても、この子に関しては、最初からそう決まってた、この子がその道を行くお手伝いをしただけなんだって心からそんな風に思うんです。
お店で、その子のお迎えを決める時、「この子と幸せに暮らしていこう」とあなたが思ったその時に、その子もきっと同じようにそう思ってあなたの所へ来てくれているんです。
色々な事情がありますから、それが難しくなる事だってあるのかもしれない事は分かっています。
だからせめて、そうなってしまった時には、次の幸せへは、あなたがちゃんと繋いであげて下さいね。
「誰か良い人に拾われますように」は、動物遺棄という犯罪行為です。
最後に、お時間がまだありましたら…
今回とはまたちょっと違った幸せの形
「ゆっくり家族になっていこうね」って里親さんのお話しもご紹介させて下さい。
飼育放棄された可哀想なフェレットはいませんでしたってお話(譲渡完了のご報告)
当ブログサイト「いたちのおうち」を開設して早3年になるのですけど、先月はじめて「一度も更新できない月」となってしまいまし ...
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健やかなニョロニョロ生活を☆彡