今回のお話は「前編」からの続きとなります。
本来であれば、飼養環境もあまり適切とはいえず、飼い主さんから「もう飼えない」として里子に出されるワンちゃんの場合、一時預かりボラが所有権ごとお引き受けした後、そこから里親さんを探してご縁に繋ぐというのが最もトラブルが少なくスムーズな方法です。
が、今回のお話しでは、ご高齢である元親さんからの「世話が出来なくてもギリギリまで手元に置いておきたい」という強い希望を、私がお世話に通えば叶えてあげられるという好条件だった事もあって多くの友人知人の協力のもと
「個人さんから個人さんへの譲渡のサポート」という形で無事にご縁をお繋ぎする事が出来ました。
…出来ていたはずでした。
動物愛護(保護)活動を「愛誤」だと言うようになるのは…
正式譲渡完了の報告からだいぶ経ったある日、元親さんから「里親さんが電話に出なくて困ってる、大至急連絡をくれるように伝えてくれ」と電話がありました。
「お伝えする事は出来ますが、どういったご用件になりますか?」と聞いたら「あなたには関係無い話だから」と返ってきました。
里親さんになられた方からは時々、その子のご報告を私にも頂けたりしていたので、「~という連絡があったのですが、何かありましたか?」と、そのまま聞いてみる事にしたのですが、「最初は連絡をこまめにしていたのですが」から始まったそのお話しは、「何かあった」どころではない内容でした。
「電話ばかりではなく、月に一度は顔を見せに来るのが常識だろうと怒鳴られたんです。会わせに行ったら行ったで「勝手に名前を変えるなんてバカにしてるのか」と怒られて、この子の事を昔の名前で呼んだり、こんなカットはうちの子には似合わないって、その場で元のサロンに予約をいれてそこへ行くように強要されたりして…もう会わせたくないというか、正直、私自身、こういうお付き合いをずっと続けていかなければいけないのかと思うと気が重くて電話にもなんだか出られなくなってしまって…」って
「相談しようと思ってた」との事でした。
動物愛護(保護)ボラは都合の良い便利屋ではありません
例えそれがいくらどんなに円満な譲渡であったとしても、その子が新しい環境に馴染むまでは元の飼い主さんに会わせたり、元の環境に連れて行ったりは、なるべくなら「ワンちゃんが混乱するからしない方が良い」とされているはずです。
が、今回は、年齢が理由の体調不良という事で、「里親さんさえ良ければの話しにはなりますが、落ち着いたら一度…」みたいなお話しは確かにした覚えがあります。
ですが「月に一度」だとか「それが常識」だなんて、とんでもない話です。
何故そんな、譲渡の条件にも契約にもない一方的な話に乗ったのかを聞いたら、元親さんから「自分は癌である」と伝えられていたとの事でした。
そんな話を聞いていたら、会わせて欲しいと頼まれたら、そりゃ会わせてあげたいってなるよなぁ…って、当たり前に思いました。
最初からそのつもりだったから、真っ当なボラが入るのを嫌ったんですね
でも、このとんでも無いお話しはそれだけではまだ終わらず
「せっかくの女の子なんだから子供を産ませてやって欲しいんだと、どこかのオスのワンちゃんとのそれをセッティングしているって言われて…」って、
「えっ?」
私は一瞬、誰の話しをしているのかが分からなくなるほど混乱しました。
もちろん、そういう条件をつけて里子にだす案件もあるにはあるのだとは思いますが、今回はそんな話ではありません。
それを勝手にセッティングまでしているだなんて、それじゃあまるで、元親さんが言っていた「これまでやってきた事(前回の記事参照)」の手伝いにボラを使っただけじゃないですか。
もちろん、そんな事はさせないし、もう出来ないんですけどね。
ボラが「サポートに入る」とはこういう事です
メスの避妊手術は全身麻酔をかけて開腹し、卵巣または子宮もしくはその両方を摘出するのが一般的です。
いつ避妊手術を行うといいかは、さまざまな意見がありますが、初回の発情を迎える前、生後数ヶ月がベストとされています。
これは、発情する前に避妊した場合、その後の乳腺腫瘍発生率が極端に低く抑えられることなどを根拠としています。
また、術後の回復は、若くて体力があるほど早くすみます。
これは要するに、
「出産させる予定がないのであれば、その子の健康のために不妊手術は早い方が良い」
という事です。
そういう事のスペシャリストであるボラが入っているのですから、不妊手術未実施の子をそのままにしておくわけが無いじゃないですか。
きっちりそのメリットデメリットを里親さんには説明しており、
「その子のこれからのために」と
里親さんは最初から手術を受けさせてあげる事を視野に入れてその子の親になる事を決めておられました。
そういうお話しで成立した譲渡だったのですから、当然、その手術は終わっています。
「何を今さら…?」でしか無いのです。
非常識なのはどっちですか?って話
「名前を変えただけであれだけの罵声を浴びせてきた元親さんが相談もなく手術を受けさせた事を知ったら今度は何を言いだしてくるのか分からなくて怖い。怒鳴られるのは構わないけど、もしかして、ワンちゃんを返せとか言われないでしょうか…」と続きました。
「えぇっ?」
相談も何も無いですし、そもそも、もし、そんな事を言ってきたとしたって、そんな「返せ」に応じる必要は無いです。
何をそんなにオドオドと不安になっているのか…その理由はすぐに分かりました。
「もう会わせられませんよって、こちらからきちんとお話ししておきますね」な話
その子に新しい名前を付けてあげる事は契約違反ではありません。
新しい飼い主さんにある権利の1つです。
その子に不妊手術を受けさせてあげたのは、「その子の体とこの先の健康のために」です。
譲渡契約書は、その手術について「里親さんの判断に任せる」という内容でした。
(※これらについては、その都度、違いますので、「譲渡」の参考にはなさならないで下さい)
里親さんは何も間違った事をしていないのに、何をそんなに怯えているのか、その後の話しを聞いたら、まあ、ビックリ。
「勝手な事をするな」と怒鳴られていただけではなく、事あるごとに「あんたに飼われてたら犬が死ぬ」「うちの子を殺す気か」と、さんざんさんざん言われてきたと…
こういうのもきっとモラハラの一種かとは思うのですけど、例えそれが全く筋の通らない言い掛かりであっても、それを長期的に繰り返される事で冷静な判断が出来なくなっているようでした。
もう、すっかり参っておらる様子で「この子はもううちの子ですよね、もうずっとうちの子でいてくれるって事で良いんですよね」って、それだけを何度も何度も私に確認されていました。
「もっと早く相談してくれれば良かったのに…」とは思いましたが、もうそこまでになっていたら私だけの言葉ではどうにも弱いので、その辺りの事も含め、仲介してくれたボラ達に報告を入れました。
嫌われるのもボラの仕事
「何よ?それ?」
「話しの全てがおかしすぎる。そんな話にはもう乗らなくて良いしもう会いに行く必要はない、それがワンちゃんのためだからと、まず里親さんの心配事を全て払拭してあげるのが先だね」
「どう聞いても干渉が限度を超えていて、非常によろしくないよ、これ」
「っていうか、元親さんが今でも「うちの子」と言っているのが気になるね。言葉のあやかもしれないけれど、もしもそういう認識でいるなら、一刻も早く正さないと」
等々などなどの結果、
「元親さんが始めからそのつもりだったのかは分からないけど、里親さん側にはそれは関係ない。とにかく、もう里親さんは仕事が忙しいからなどと言って少しずつ元親さんからの距離を置いてもらって様子を見よう」となりました。
里親さんからのお話しを突き付けて「契約違反だしそんな非常識な事を要求しているのならもう会わせられない」と言ってしまうのは簡単です。
でも…
他に何か別の目的があったのだとしても、自分の健康状態だけが理由で手放す事になった子に会いたいと思うその気持ちをスパッと切ってしまえるほど無情にはなれなかったのです。
(※これは、あくまでも、里親さんのフォローが100%出来るからというのが大前提な話ですが)
少し気が弱い里親さんを見て元親さんがそんな風に強気に出始めたのか、そもそもから「今回の譲渡」を根本から理解していないのか、その確認を改めてする必要がありました。
「このお話しは、そういう話じゃないですよね、今の状況をご理解頂けていますか?」
これはもう、トライアル期間中に一度、私が直接しています。(前記事参照)
なので、もう一度のそれは私が引き受けました。
これは…解決って事で良いのかな?な話し
電話がつながった途端に「あー、ちょうど良かった。電話待ってたのよ、ちょっと聞いてくれる?」と、一方的にその話は始まりました。
「よそ様にくれてやった犬の事をいつまでもグジグジ言ってるな!そんな話は聞きたくない!お前が間違ってるって旦那に怒られちゃったわよ」って、おっしゃっていました。
言い方(表現)に難ありではありますが、「くれてやった(譲渡した)」という認識である事の確認もとれたし、「もうグジグジ言わない」とご本人の口からも出ていたので、「一件落着かな」と、本来であれば本当にこれで「無事に完了」となるはずでした。
続く