はじめに
BCPとは英語の「Business continuity planning」の頭文字を取った略語のことで、日本語では「事業継続計画」と訳され、災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画の事を言います。
いたちのおうちはビジネスらしいビジネスは何もしていませんが、事業所として認可を受けている施設なので、私はその責任者として、そういう研修を受けたり、講演を聴きに行ったりするわけです。
先日、受けてきた動物取扱責任者研修でもBCPについての話が出ました。
当たり前と言えば当たり前の事ですが、「責任者」が受ける研修なので、
- 従業員と家族の安全確保について
- 顧客に対する対応について
- 自治体との連携・連絡の確認
みたいな事を「災害発生と同時に考えるんじゃ遅いんですよ」ってなお話しから始まったりはするのですが、そこには「動物たちの命を扱うこと」を事業内容としている人達が集まってるわけですから、当然、動物たちがいる事が前提でその事業の継続や復旧を図るための研修内容なわけです。
去年は上記の事について私の考えとそれを受けてのいたちのおうちの災害時の心構えをブログ記事にしました。
今年は、そこから一歩進めて、これは多くの皆様とも「災害時でもペット飼育を継続する計画」として共有できるんじゃないかって、いたちのおうちが実際にとっている「具体的な対策案」をお話しさせて頂こうと思います。
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BCPとは何があっても事業を止めないための事前計画と本番に向けた準備のこと
2018年は「数十年に一度クラス」と言われる大きな自然災害が何度も日本を襲ってきています。
その度に、災害ハイの状態で誤った呼びかけをする人、間違った情報を流す人、自分が発信した情報に責任を持たない人…それらに反応してしまう人達を必ず見かけます。
※災害ハイ=災害という非日常体験で精神状態が不安定になり、気分が高揚している時と同じような言動を繰り返す事
基本として、災害などが起きてから(被災地でも非被災地ででも)慌てて備える動きや、備えたそれを「備蓄」とは言いません。
特に、大きな被害を受けているわけでも無く、本来であれば通常の日常生活を送れるはずの地域でのそれは「パニック買い」と呼ばれる災害パニックの1つで、
不必要な買占めなど通常の精神状態ではない人から伝搬されるそれが、集団ヒステリーの引き金となり、人為的に第二第三の災害(物流の混乱など)を引き起こすことに繋がります。
直接は被災していなくても、そういう状況下では、程度の差はあれ通常の精神状態ではない人の方が多くて当たり前な事は分かります。
そして、人というのはそういう状況下では「よりネガティブな情報を選択しがちである」と、それが人間の心理として証明されている事実がありますので、どうか、今これをお読み頂いている、正常な状況下にあるあなたは知っておいて下さい。
- 災害が発生してからでは間に合わない(備蓄にならない)ということ
- 被災していない場所でのそれは被災された方々の復旧の妨げになるということ
だから、
何もない時にその準備をしておかなければいけないということ
災害に備えるというのは「復旧まで自力でもたせられるように」備えるということ!
かつては、「家庭用の備蓄は最低3日分は必要」なんて言われていましたが、今は「大災害時に備えて7日分は必要です」と政府が公式発表としている事はご存知でしょうか?
詳しくは「首相官邸 災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」でご確認下さい。
これは、大災害に見舞われたら、ライフライン(エネルギー施設、水供給施設、交通施設、情報施設など)の復旧に7日はかかると思っていて下さい!という事です。
当然、それらが復旧したからと言って、即座に元通りの生活が始められるという事ではありません。
それがペットの事にまできちんと整えられるのはそれより更に時間がかかるという事を知っておいて下さい。
それまでの間をずっと家庭の備蓄だけで乗り切れるように備えておいてあげて欲しいのです。
ペットの物の備蓄は最低2週間分は欲しい。本当は1ヶ月分は欲しい。
「備蓄」というのは、必要な物資をただ蓄えておくことです。
非常時の緊急持ち出し袋などに入れておくべき物とは別です。
人間用でも「7日分の備蓄」を全て持って避難する事は出来ません。
今日は、「家庭で備えておいてあげて欲しいもの」のお話しをさせて頂いています。
フードやお水について
これは、はっきり言って1ヶ月分は無いと私は不安です。
ですが、天井を上げだしたらキリがないので、ここでは「最低でも2週間分以上」という表現のままで続けます。
ここで気を付けて頂きたいのは、
ご家庭で小分けにパッキングした物などは「長期間の保管には向かない」という理由で備蓄用には避けて下さい!という事です。
もしも、カビが生えている事などに気が付かずに与えてしまった時、お腹を壊してしまったら、すぐに病院へ連れて行ってあげる事が出来ません。
備蓄用には必ず「未開封のフード」を用意しておいてあげて下さい。
分かりますね?
「2週間分」にとらわれず、「未開封のフード」という事で考えてあげて下さい。
お水も、普段は何をどう与えていても構いませんが、災害時に備えるという事を考えたら、未開封のペットボトルで2週間分は買っておいてあげると安心できるんじゃないかなって思います。
用意が無かった時に覚えておいて欲しいこと
本当はあってはいけない事ですが、もしも万が一、ストックが切れてしまったら、まずは、近くの動物病院やペットホテルへ行ってみて下さい。
BCP策定というのは今のところ法律や条令で決まっている事では無く、義務でもないため、必ずしもそういう施設にその備えがあるとは限りませんが、きちんとその対策を考えている所であれば、少しは備えがあるはずです。
Twitterなどで声をあげても、「遠くから」の支援が手元に届くのは上記の通りライフラインが復旧した後になります。
なので、緊急を要する場合であれば、近くのそういう所をあたった方がより確実だと頭にいれておいて下さいね。
また、お店で購入できる状態であれば必要な分だけに留めて下さい。
上記でも述べたように、災害が発生した直後に「備えよう」としないで下さい。
他にも必要とする人がいるかもしれません。
近くに支え合える仲間がいれば、その方に声を掛けるのが一番、確実で安心かとも思いますので、そういう時のためにも「ニョロ仲間」のネットワークは普段から大切に築いていって欲しいと思います。
環境について
温度、湿度、照度、騒音、換気、プライバシーの保護、安全確保
この全てを電力などに頼らず自力で快適に保ち続けてあげるには限度があります。
ですが、備えてさえもいなければ、まるっきりお手上げ状態でなすすべなく天候に左右されるだけの環境になってしまいます。
電力に頼らずとも少しでも涼しい・暖かい環境にしてあげられるグッズはたくさん売っているので、これを機に一度、シミュレーションしてみて下さい。
ひんやりした生地、もこもこ温かい生地など、季節に合わせて全ニョロが少しでも快適に約2週間を過ごせる枚数でハンモックの用意はありますか?
「全ニョロが」の視点で一度、この子達の身の回りのグッズを確認してあげてみて下さいね。
ここであえて「全ニョロ」と表現したのは、一番、用意しておいてあげて欲しい物のお話しに繋げるためです。
匹頭数分…せめて2週間を「ストレス無く過ごせるケージ」をニョロの数に対して適切な台数で用意してあげて下さい
災害時には動物たちも大きなストレスを受けているという事はもう知られていますよね?
この子達だって怖い思いをするのですから当然です。
そういう時、人間は「誰かと一緒」が落ち着くかもしれませんが、動物たちの中には「静かに隠れている事で安心できる」という本能があったりもします。
また、倒れた家具や割れた何かが落ちているかもしれない室内を裸足のこの子達に歩かせるわけにはいきません。
それらを含め、ケージの重要性はこちら『フェレットの飼育【ケージの正しい使い方】「持ってない」が虐待行為になる理由』などをお読み頂ければと思います。
もちろんケージだけあっても意味がありません。
普段はしまっておいて構いませんが、いざという時にはすぐにセットができるよう、お水のボトルやフード皿その他もきちんと数を揃えて用意しておいてあげて下さいね。
トイレの事(臭いの対策)は特に重要
トイレの砂やシーツももちろん「備え」として、その分だけ備蓄が必要です。
が、これについては、ペット飼いである以上「その後のこと」までをしっかりと考えて、その準備が必要です。
これまで何度かお手伝いをさせてもらいに行った被災地では必ずどこででも「ニオイ」の事が問題となっていました。
ゴミの収集が無い間、自宅で保管しておかなければなりません。
こういった物を用意しておきましょう。
上:コストコなどで売っている普通のラップより更に強力にピタッと密封できるもの
これはTwitterで「赤ちゃんのオムツをこれに包んで捨てればニオイ対策になる」と投稿され話題になった商品です。
友達に買ってきてもらい私も試しましたが見事な密閉性で、本当に優れものです。
下:見たままです
こちらは何社かから似たような商品が出ていますので、銘柄などにはこだわらず、「こういった物」としてお考え下さい。
「ニオイ」というのは意外とストレスの原因になるものです。
そういう状況下において、少しでも生活の質を下げないためにもこういった物は必ず持っていて下さい。
女性は特に!非常用持ち出し袋にも!
ここまでは、「家庭での備蓄」についてお話しさせて頂いてきましたが、この臭い対策グッズだけは、非常用持ち出し袋にも忘れずに入れておいて下さい。
例えば、避難所へ行くことになった時、慌てて支度をするなか、キャリーをフル装備にしてあげる事は出来ても、これは忘れてしまう事が多いです。
だから、非常用持ち出し袋にも先に入れておいて下さい。
これは、集団生活を送る事になるうえでの最低限のマナーというより「あなたの身を守る」ためのものなのです。
避難所では、ゴミの集積場所は皆がいる場所からかなり離れたところに設置されます。
例えば、体育館が避難所だとしたら、ゴミ集積場は一番離れた校庭の隅などです。
昔、お手伝いに行った先々で、電気の復旧を待っている状況の「真っ暗闇で女性が一人でゴミを捨てに来るのを狙っている不届き者(や集団)がいる」という注意喚起は私たちボラスタッフにまで出ました。
襲い掛かられたのは女性ばかりでは無いという話もありました。
こういうグッズさえ持っていれば、ニオイを気にして夜中にそんな危ない目に遭う必要はなくなります。
ニオイで周囲に気を使って居心地の悪い思いをする事も減ります。
だからどうかどうか、
これ(これじゃなくても良いので臭い対策できる物)は絶対に持っていて下さい!!
まとめ
今日のお話しは「必ずこうしなければいけない」というお話しではありません。
それぞれのお家に合うやり方で、この子達の事を考えた災害対策をしてあげる時に、少しでも、お役に立てる事があればと思い、その考え方の参考にして欲しいことを書きました。
非常時における事業継続計画ならぬ、『飼育継続計画』
どうか今一度、何もない平常時に改めてお考え頂けたらなって思います。
健やかなニョロニョロ生活を☆彡